Pioneer TX-8900

Pioneer TX-8900 をゲット!

2015年9月6日、 Pioneer TX-8900 の中古ジャンク品を税込900円で入手しました。

入手した動機はこのマシンに搭載されている 分布定数形遅延線検波 に興味があったからです。 Pioneer では [超広帯域直線検波] や [PBLD] と呼んでいます。 Pioneer F-007 で PBLD はとりあえず経験していましたが、じっくり研究したいと思いました。



程度&動作チェック

  1. 販売者のコメント

  2. 外観

  3. 入手した状態のまま電源 ON してチェック

  4. 以上の状況から想像されるのは以下



カバーを開けてみました

  1. 古き良き時代の作りです。 機能別に複数の基板・パーツで構成します。 コストがかかっています。

     


  2. 以下の IC を使用して合理化が図られています。

    メーカ IC 機能
    HITACHI HA1211 FM IF Amplifier
    HA1137 FM IF System
    HA1138 AM Electronic Tuner
    HA1156 PLL FM Stereo Demodulator
    MITSUBISHI M5109PR 差動増幅器 (デュアル)

  3. FM フロントエンド

  4. FM IF 部

  5. FM 検波部

  6. FM MPX 部

  7. FM MUTING 部

  8. AM 受信部



リペア

  1. FM 受信で S メータおよび T メータが全く動作しない。

  2. 右チャンネルからはバリバリという雑音しか出ない。

  3. 以上の修理後、新たに VALIABLE 出力の左チャンネルから時々バリバリという雑音が出ることが判明しました。

  4. トランジスタの故障が多い (2SA725/2SC1312) と感じたので、以下のトランジスタも予防交換しました。

  5. まとめると今回交換した IC×1個、トランジスタ×10本でした。



調整

写真の FM/AM 標準信号発生器 Panasonic VP-8175A (以下 SSG)、 FM Stereo 信号発生器 MEGURO MSG-2170、 周波数カウンタ ADVANTEST TR5822 を使って調整します。 10年も経つとコイルやトリマはズレます。

  

  1. 調整ポイント

    基板 FM/AM
    区分
    種別 調整ポイント 調整内容 参考図
    フロントエンド FM L T1, T2, T3, T4 RF 図-1
    TC TC1, TC2, TC3, TC4
    L T5 OSC
    TC TC5
    IFT T6 IF
    チューナ基板 FM IFT T1, T2, T3, T4, T5 IF 図-2
    IFT T6 同調点
    VR VR1 S メータ
    VR VR2 ミューティングレベル
    VR VR3 PBLD バランス
    AM L バーアンテナ, T7 RF
    TC TC2, TC3
    L T8 OSC
    TC TC1
    IFT T9, F5 IF
    MPX 基板 FM VR VR1 MPX VCO 図-3
    VR VR2 ステレオセパレーション
    AF 基板 FM/AM VR VR1 REC CAL レベル 図-4

     

     

  2. 電圧チェックポイント (VP)

    VP 標準値 実測値
    [電源基板] 2pin +13V +13.3V
    [電源基板] 5pin -13V -13.1V

  3. FM 受信部の調整

    手順 SSG出力 TX-8900 の設定 調整箇所 TP 及び調整値 備考
    1 - FUNCTION : FM MONO
    MPX NOISE FILTER : OFF
    MUTING : OFF
    - -  
    2 83MHz
    90dB
    mono 1kHz
    指針を 83MHz 付近で
    高調波歪率が最小になる
    位置に合わせる
    チューナ基板
    T6 下側コア
    T メータ = センタ 同調点(仮)調整
    3 78MHz
    90dB
    無変調
    指針を 78MHz に合わせる フロントエンド
    T5
    T メータ = センタ OSC トラッキング調整
    指針をダイヤルスケールに
    合わせるのが目的
    4 88MHz
    90dB
    無変調
    指針を 88MHz に合わせる フロントエンド
    TC5
    5 手順3〜4を数回繰り返す
    6 78MHz
    30dB
    無変調
    78MHz 受信 フロントエンド
    T1
    T2
    T3
    T4
    S メータ = 最大 RF トラッキング調整
    7 88MHz
    30dB
    無変調
    88MHz 受信 フロントエンド
    TC1
    TC2
    TC3
    TC4
    8 手順6〜7を数回繰り返す
    9 83MHz
    30dB
    無変調
    83MHz 受信 フロントエンド
    T6
    S メータ = 最大 IF 調整
    10 83MHz
    30dB
    無変調
    チューナ基板
    T1
    T2
    T3
    T4
    T5
    チューナ基板
    T5 2次側波形 = 最大
    オシロスコープで観測
    IF 調整
    11 83MHz
    90dB
    mono 1kHz
    チューナ基板
    VR3
    チューナ基板
    VR3 摺動子接点 (センタ) = 0V
    PBLD オフセット調整
    12 チューナ基板
    T6 上側コア
    チューナ基板
    TP12 = 高調波歪最少
    同調点調整 (QR 検波)
    13 チューナ基板
    T6 下側コア
    T メータ = センター (0V)
    14 手順12〜13を数回繰り返す
    15 83MHz
    10dB
    mono 1kHz
    83MHz 受信
    MUTING : 1
    チューナ基板
    VR1
    MUTING = ON/OFF 閾 ミューティングレベル調整
    16 83MHz
    100dB
    無変調
    チューナ基板
    VR2
    S メータ = 5 S メータ調整
    17 83MHz
    90dB
    stereo 1kHz L+R
    83MHz 受信
    FUNCTION : FM AUTO
    MPX 基板
    VR1
    下の [VCO 調整手順] を参照 VCO 調整
    18 チューナ基板
    T1
    T2
    T3
    T4
    T5
    オーディオ出力 = 高調波歪最小 IF 歪補正
    19 83MHz
    90dB
    stereo 1kHz R/L
    MPX 基板
    VR2
    L/R ch. オーディオ出力 = 最小 セパレーション調整
    20 83MHz
    90dB
    mono 400Hz
    - オーディオ出力 = レベルを記録 REC LEVEL CHECK 調整
    21 - FUNCTION : REC LEVEL CHECK AF 基板
    VR1
    オーディオ出力 = 手順20の -6dB

  4. AM 受信部の調整

    手順 SSG出力 TX-8900 の設定 調整箇所 TP 及び調整値 備考
    1 - FUNCTION : AM - -  
    2 600kHz
    30dB
    400Hz
    600kHz 受信 チューナ基板
    T7
    T8
    バーアンテナ
    オーディオ出力 = 最大 トラッキング調整
    3 1400kHz
    30dB
    400Hz
    1400kHz 受信 チューナ基板
    TC1
    TC2
    TC3
    4 手順2〜3を数回繰り返す
    5 1000kHz
    30dB
    400Hz
    1000kHz 受信 チューナ基板
    F5
    T9
    オーディオ出力 = 最大 IF 調整

  5. 調整結果

    項目 L R 単位
    ステレオセパレーション 50 49 dB
    パイロット信号キャリアリーク -72 -69 dB
    オーディオ出力レベル偏差 (MONO) 0 -0.12 dB
    REC LEVEL CHECK 信号 -6.7 -6.6 dB
    422 Hz



使ってみました

  1. アクセントを持たせたシンプルデザインに好感

  2. 機能関連

  3. 性能・音質



仕様その他

  1. TX-8900 の輸出型式 TX-9500 のドキュメント

  2. 仕様は以下です。

    FM 受信部
    実用感度 (75Ω) mono 0.75uV
    S/N 比 50dB 感度 (75Ω) mono 1.25uV
    stereo 17.5uV
    S/N 比 mono 80dB
    stereo 75dB
    高調波歪率 mono 0.15% (100Hz), 0.15% (1kHz), 0.15% (10kHz)
    stereo 0.2% (100Hz), 0.2% (1kHz), 0.5% (10kHz)
    キャプチャーレシオ 1.0dB
    実効選択度 85dB (400kHz)
    55dB (300kHz)
    ステレオセパレーション 40dB 以上 (1kHz)
    35dB 以上 (50Hz〜10kHz)
    周波数特性 50Hz〜10kHz +0.2 -0.5dB
    20Hz〜15kHz +0.2 -1.5dB
    イメージ妨害比 110dB
    IF 妨害比 110dB
    スプリアス妨害比 110dB
    AM 抑圧比 55dB
    キャリアリーク抑圧比 65dB
    ミューティング動作レベル (75Ω) mute-1 2.5uV
    mute-2 11uV
    アンテナインピーダンス 75Ω不平衡型 / 300Ω平衡型
    AM 受信部
    実用感度 300uV/m (バーアンテナ)
    15uV
    選択度 40dB
    S/N 比 50dB
    イメージ妨害比 65dB
    IF 妨害比 85dB
    総合
    出力レベル/インピーダンス Fixed 650mV/5kΩ
    Variable 70mV〜2V/3.5kΩ
    4ch MPX 400mV/2.5kΩ
    電源電圧 AC100V, 50/60Hz
    定格消費電力 18W
    外形寸法 420(W)×150(H)×365(D)mm
    重量 9.1kg
    その他
    発売時期 1975年
    定価 65,000円