SANSUI TU-α707

SANSUI TU-α707 をゲット！

2008年6月12日、提携している BLUESS Laboratory さんから SANSUI TU-α707 を寄贈いただきました。

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程度＆動作チェック

1. 外観
   
   
   • 全体としては綺麗な部類で美品です。
     
     
   • フロントパネルの天板側の左側に1本 2cm 程度のけがきキズがあり、その他にも若干キズはあります。
     
     
   • リアパネルの端子類にサビはありません。
     
     
   • 電源ケーブルの製造マーキングより、[1987年製] と判明しました。
     
     
2. 電源 ON してチェック
   
   
   • 蛍光表示器に劣化はありません。 新品同様な輝きです。
     
     
   • 既に再調整されているとのことで、FM/AM とも問題なく受信できました。 受信性能や音質は良さそうです。
     
     

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カバーを開けてみました

1. 作りは非常に良いです。 写真をクリックすると拡大写真を表示できます。
   
   
   • なんと！ガラスエポキシ基板
     
     
     • この基板材料は高価な素材で、吸湿性が低いので通信機に採用されます。
       
       
     • 今までガラスエポキシ基板を見たのは A&D DA-F9000 だけでした。
       
       
     • ガラスエポキシ基板はある程度透けて見えるので、プリントパターンが部品面から見えます。
       
       
   • 点検用裏板があってメンテナンスしやすいです。
     
     
   • 最下段に配置されている8個のスイッチにスライドスイッチが使われています。
     
     
     • これらのスイッチの接点は、メイン基板の縦方向に実装されている小さい基板で受けられます。
       
       
   • 高級な電源トランスを使用しています。 電源基板もシッカリ作られています。
     
     
   • 剛性の高い筐体となっており、振動による OSC 回路への雑音が防げます。
     
     
   • FM アンテナ端子は F 端子で2系統あります。
     
     
     • リアパネル裏側にアンテナ切替基板があって、ここでアンテナを切替します。
       
       
     • アンテナ切替にはリレーを使用しており、他アンテナ端子からの電波回り込みはほぼありません。
       
       
2. FM フロントエンド
   
   
   • シールドされた汎用のもので、使用部品中で一番安っぽいです。
     
     
   • 中身はよくわかりませんが、RF コイルはエナメル線をただグルグル巻いただけの調整し辛いものです。
     
     
   • 4連バリキャップでトラッキング調整はできません。 RF DIRECT 切替 (DX/LOCAL) ができます。
     
     
   • FM 受信周波数同調 PLL 回路に SANYO LC7217 が使われています。
     
     
3. FM IF 部
   
   
   • IF BAND 切替 (NARROW/WIDE) ができます。 IF 部の構成は以下で、なかなかシッカリした構成です。
     
     
   • WIDE 時
     
     [FET]→[CF]→[uPC1163H]→[CF]→[TA7302P]→ [WIDE IFT]→[TR] →[FET]→[LA1235]
     
     
   • NARROW 時
     
     [FET]→[UP]→[uPC1163H]→[UP]→[TA7302P]→ [CF]→[CF]→[FET]→[NARROW IFT]→[TR] →[FET]→[LA1235]
     
     
   • FM 同調点検出は SANYO LA1235 で行います。
     
     
4. FM 検波部
   
   
   • PLL 検波です。 位相検出＆検波はバランスド検波です。 歪補正回路が入っています。
     
     
5. FM MPX 部
   
   
   • SANYO LA3450 を使った PLL MPX です。 この IC は良い音が出ます。
     
     
   • L/R 別々にセパレーション調整できます。 IF NARROW 時専用のセパレーション調整もできます。
     
     
   • パイロット信号キャンセラー回路が組み込まれています。
     
     
6. AM 部
   
   
   • SANYO LA1245 で全てを構成します。
     
     
   • AM フロントエンドは2連バリキャップ構成です。 同調回路はトラッキング調整ができます。
     
     
7. プリセットメモリのバックアップ
   
   
   • メイン基板左下の黄色の 3.9mF 5.5V キャパシタで行います。
     
     

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調整

写真の FM/AM 標準信号発生器 Panasonic VP-8175A (以下 SSG)、 FM Stereo 信号発生器 MEGURO MSG-2170、 周波数カウンタ ADVANTEST TR5822 を使って調整します。 10年も経つとコイルやトリマはズレます。

　　

1. 調整ポイント
   
   FM 受信部と AM 受信部で同じ名称の調整ポイントがあるので要注意です。
   
   
   • FM 受信部
     
     

     種別	調整ポイント	シルク印刷	備考
     VR	VR1	FM STOP
     VR	VR2	WIDE GAIN
     VR	VR3	NARROW GAIN
     VR	VR4	MUTE
     VR	VR5	FM SIG
     VR	VR6	DISTORTION
     VR	VR7L	L SEP
     VR	VR7R	R SEP
     VR	VR8	NARROW SEP
     VR	VR9	REC LEVEL
     VR	VR10	PILOT CAN
     T	T1	-	WIDE IFT
     T	T2	-	NARROW IFT
     T	T3	-	(調整不要)
     T	T4	-	同調点検出 IFT
     T	T5	-	PLL 検波 IFT
     T	T6	-	PLL 検波 OSC IFT
     T	T7	-	(非実装)
     T	T8	-	PILOT CANCEL
     T	LF1	-	(調整不要)
     TC	TC1	-	PLL ベース周波数微調節 (7.200MHz)

     
     
   • AM 回路
     
     

     種別	調整ポイント	シルク印刷	備考
     VR	VR1	AM SIG
     VR	VR2	AM STOP
     T	T1	-	OSC
     T	T2	-	RF
     T	T3	-	IFT
     TC	TC1	-	OSC
     TC	TC2	-	RF

     
     
2. 電圧チェックポイント (VP)
   
   
   • 以下のように良好でした。
     
     

   VP	標準値	実測値	備考
   電源基板 [JP2] +29V	+29V	+28.87V	PLL VC 用
   電源基板 [JP2] +12V	+12V	+12.57V	チューナー用
   電源基板 [JP2] +18V	+18V	+21.51V	FL 用
   電源基板 [JP2] +5.6V	+5.6V	+5.64V	MCU 用
   電源基板 [JP2] -27V	-27V	-21.81V

   
   
3. FM 受信部の調整
   
   

   手順	SSG出力	TU-α707 の設定	調整箇所	TP 及び調整値	備考
   1	-	BAND : FM REC CAL : OFF RF DIRECT : DX IF BAND : WIDE FM NOISE CANCELER : OFF	-	-
   2	83MHz 90dB 無変調	83MHz 受信	T4	TP1〜TP2 間電圧 = 0±20mV	FM 同調点調整
   3	-	90MHz 受信	[フロントエンド] OSC コイル	JW3 電圧 = 21±0.1V	OSC トラッキング調整
   4		76MHz 受信	-	JW3 電圧 = 3±0.5V 確認のみ
   5	83MHz 40dB 無変調	83MHz 受信	[フロントエンド] RF コイル×3	D4-C 電圧 = 最大	RF トラッキング調整
   6			[フロントエンド] IFT		IF 調整
   7			T1		WIDE IF 調整
   8			VR2	D4-C 電圧 = 手順10と同一
   9		83MHz 受信 IF BAND : NARROW	T2	D4-C 電圧 = 最大	NARROW IF 調整
   10			VR3	D4-C 電圧 = 手順8と同一
   11	83MHz 90dB 無変調	83MHz 受信 IF BAND : WIDE	T5	D9-C 波形 = 最大 オシロスコープで観測	PLL 検波調整
   12	83MHz 90dB mono 1kHz		TC1 VR6	オーディオ出力 = 高調波歪最小
   13	83MHz 90dB mono 1kHz		T6	TP3〜TP4 間電圧 = 0±10mV
   14	手順12〜13を数回繰り返す
   15	83MHz 90dB stereo 1kHz L+R	83MHz 受信	T8 VR10	オーディオ出力 = 19kHz 成分最小	パイロットキャンセラ調整
   16	83MHz 90dB stereo 1kHz L		[フロントエンド] IFT	オーディオ出力 = 高調波歪最小	WIDE ステレオ高調波歪補正
   			T1
   17		83MHz 受信 IF BAND : NARROW	T2		NARROW ステレオ高調波歪補正
   18	83MHz 90dB stereo 1kHz R	83MHz 受信 IF BAND : WIDE	VR7L	L ch. オーディオ出力 = 最小	WIDE セパレーション調整
   19	83MHz 90dB stereo 1kHz L		VR7R	R ch. オーディオ出力 = 最小
   20	83MHz 90dB stereo 1kHz R/L	83MHz 受信 IF BAND : NARROW	VR8	L/R ch. オーディオ出力 = 最小	NARROW セパレーション調整
   21	83MHz 13dB 無変調	83MHz 受信 IF BAND : WIDE	VR5	S メータ = レベル1	S メータ調整
   22	83MHz 30dB 無変調		VR1	83MHz で AUTO STOP する閾に調整	AUTO STOP 調整
   23	83MHz 17dB mono 1kHz		VR4	MUTING = ON/OFF する閾に調整	MUTING 調整
   24	83MHz 90dB mono 400Hz		-	オーディオ出力 = レベル記録	REC CAL 調整
   25		REC CAL : ON	VR9	オーディオ出力 = 手順24の -6dB

   
   
4. AM 受信部の調整
   
   
   • AM ループアンテナを接続して調整します。
     
     

   手順	SSG出力	TU-α707 の設定	調整箇所	TP 及び調整値	備考
   1	-	BAND : AM IF BAND : NARROW	-	-
   2	-	531kHz 受信	T1	R1 左側電圧 = 1.5V±10mV	VT トラッキング調整
   3		1629kHz 受信	TC1	R1 左側電圧 = 20V±10mV
   4	手順2〜3を数回繰り返す
   5	603kHz 40dB 無変調	603kHz 受信	T2	D4-C 電圧 = 最大	RF トラッキング調整
   6	1404kHz 40dB 無変調	1404kHz 受信	TC2
   7	手順5〜6を数回繰り返す
   8	999kHz 40dB 無変調	999kHz 受信	T3	D4-C 電圧 = 最大	IF 調整

   
   
5. 再調整結果
   
   
   • FM ステレオセパレーションとキャリアリークは以下となりました。 良好な数値です。
     
     

     項目	IF BAND	L	R	単位
     ステレオセパレーション (1kHz)	WIDE	59	56	dB
     	NARROW	55	55	dB
     パイロット信号キャリアリーク	WIDE	-86	-86	dB

     
     

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使ってみました

1. デザイン
   
   
   • 趣味性のある、とても良いデザインです。 持つ喜びがあります。
     
     
   • フロントパネルは、アルミ材に 漆塗りのような美しい鏡面仕上げ がされています。 これが高級感を醸し出してとってもイイです。
     
     
   • 飾りサイド板ががフロントパネルのデザインを引き締めています。
     
     
   • 筐体は厚い鉄板を使っていて、かなりの剛性があります。 しかも、天板は上側からしっかりと4本のネジで押さえつけらています。 天板のサイドは6本の六角ネジでしっかり取り付けられています。
     
     
   • プリセットメモリは FM/AM とも10局で、これだけあれば特に問題ないです。
     
     
   • [RF DIRECT] ボタンで RF 増幅段を DX / LOCAL に切換できます。
     
     
   • [IF BAND] ボタンで IF 帯域を WIDE / NARROW に切換できます。
     
     
   • [REC CAL] ボタン ON で FM 100% 変調時の -6dB のテスト信号が出力されます。
     
     
   • FM アンテナ入力は2系統あって A/B 切り替えできます。 コネクタ形状は F 端子です。
     
     
2. 感度と音質
   
   
   • FM 受信
     
     
     • 感度は良く、受信性能は合格です。
       
       
     • 音質は PLL 検波臭さを感じさせない柔らかい音の中にも解像度感がある良い音です。 耳当たりの良い聴き易い音です。
       
       
   • AM 受信
     
     
     • 感度は良いです。 AM においても [IF BAND] ボタンは有効で、WIDE では高音部もよく出ます。
       
       

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レベルメータ

• FM アンテナ入力レベルとレベルメータの振れの相関関係を測定してみました。
  
  
• 1〜5 とあるのはレベル表示、×が消灯、○は点灯です。 これを見ると、S/N 良く受信するためには、フルレベルの必要があるようです。
  
  

  アンテナ入力 (dB)	1	2	3	4	5
  〜16	×	×	×	×	×
  17〜28	○	×	×	×	×
  29〜33	○	○	×	×	×
  34〜37	○	○	○	×	×
  38〜48	○	○	○	○	×
  49〜	○	○	○	○	○

  
  

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仕様ほか

1. ドキュメント
   
   
   • TU-X701 Service Manual ・・・ TU-α707 シリーズの輸出版型式は TU-X701 です
     
     
2. 仕様
   
   

   FM チューナー部
   受信周波数範囲	76〜90MHz
   実用感度	10.8dBf
   S/N 比 50dB 感度	mono : 16.2dBf stereo : 37.0dBf
   実効選択度	WIDE : 60dB NARROW : 75dB
   S/N 比	mono : 98dB stereo : 91dB
   高調波歪率	stereo : 0.0095%
   セパレーション	60dB 以上
   イメージ妨害比	80dB
   IF 妨害比	120dB
   スプリアス妨害比	120dB
   アンテナインピーダンス	75Ω
   プリセットメモリ	10局
   AM チューナー部
   受信周波数範囲	531〜1629kHz
   実用感度	48dB/m
   実効選択度	WIDE : 30dB NARROW : 50dB
   S/N 比	50dB
   歪率	0.3%
   プリセットメモリ	10局
   総合
   電源電圧	AC100V, 50/60Hz
   定格消費電力	12W
   外形寸法	448(W)×98(H)×315(D)mm
   重量	5.1kg
   その他
   発売時期	1986年
   定価	59,800円

   
   

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