TRIO KT-900 (4号機) をゲット!
2022年5月20日、
ヤフオク
で1,000円で落札した不動ジャンク品の
TRIO KT-900
が到着しました。
九州からの発送だったので送料が2,020円もかかりました。
チューンアップしてみたい
と思っての入手です。
程度&動作チェック
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オークション出品者のコメント
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電源スイッチを入れても通電しません。
部品取りや整備などされる方などいかがでしょうか。
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外観
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製造シリアル番号は [20320578] で、電源コードの製造マーキングより1980年製造品とわかりました。
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付属品は [AM ループアンテナ] だけでした。
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全体的にはキズや汚れはありますが、並みの中古品と諦めがつく程度です。
おそらく早期に故障し放置されたと思います。
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フロンパネルは、内側にゴミがかなり溜まっており、天板側への折り返し部に線キズがあります。
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チューニングノブのエッジ部にポツポツと小さなキズが2箇所あります。
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天板には大きな線キズがあります。
底板はかなり綺麗です。
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リアパネルは綺麗ですが、端子類に薄いサビがあります。
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到着した状態のまま電源 ON してチェック
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[POWER] スイッチを ON しても電源が入りません。
これ以上動作チェックしようがないです。
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天板カバーを外して内部をチェック
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内部にサビなどはなく、かなり良い状態です。
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基板は初期型のようで、基板の裏側にはジャンパー線が飛んでおり、電解コンデンサも追加実装されていました。
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ダイヤル照明とダイヤル指針のランプへの配線が、これまで見てきた1〜3号機と違いました。
機能的には同じと思います。
リペア
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[POWER] スイッチを ON しても電源が入らない
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原因は [POWER] スイッチの故障です。
内部接点が接触不良のようです。
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1980年製と42年も前 (2022年5月時点) の製品ですから、同じスイッチの入手は無理です。
さて困った!
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ワンチャンスと
エレクトロニッククリーナ
をスイッチの隙間から流し込んで ON/OFF を繰り返したら、
直りました!!!
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きっと、接点に付いていた酸化膜がボロっと剥げ落ちたと思います。
イエスの奇跡みたいなものか。
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[POWER] スイッチ ON すると気持ち良く電源が入ります。
電源の入る [POWER] スイッチはイイもんだ〜
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電源が入るようになったので動作確認
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FM 受信では、[S メータ] [T メータ] が振れますが、音が出ません。
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音が出なくて [STEREO] ランプが点灯しない以外の動作は全て正常です。
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時々、バリバリという雑音が出ます。
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ウィークポイントである FM OSC トリマコンデンサは生きていました。
この機種でトリマコンデンサが生きている個体は初めて!
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AM 受信は問題なく、[S メータ] が振れ、音もちゃんと出ます。
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FM 受信で音が出ない
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オシロスコープで波形観測して原因を探ってみました。
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パルスカウント検波用の 2nd OSC が発振していないと判明しました。
これが音が出ない原因です。
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2nd OSC は [TR7020] と [L5] で構成します。
おそらく、どちらかが故障している。
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[TR7020] は多機能 IC です。
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[IF 増幅] [クォードラチュア検波] [S メータ] [T メータ] [2nd OSC] [REC CAL OSC] の機能があります。
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[L5] は 8.74MHz 2nd OSC 発振同調器です。
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混合回路で
10.7MHz (FM 1st IF) - 8.74MHz (2nd OSC) = 1.96MHz
の 2nd IF を作成します。
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[TR7020] を交換してみました。
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[TR7020] は TRIO-KENWOOD 製の特殊な IC で市場にはなかなかありませんが、なぜか?持っていました。
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基板より [TR7020] を取り外し、丸ピン IC ソケット化してから、手持ち品と交換しました。
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結果、音が出ない現象は変わりませんでした。
[TR7020] の故障ではないです。
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そうすると、[L5] の故障か?
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[L5] を取り外して、内蔵されているチタコンを見ると真っ黒に錆びています。
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[L5] からチタコンを取り外してから、再度基板に実装しました。
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内蔵チタコンの代わりに 82PF 温度補償型積層セラミックコンデンサを外付けしました。
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2nd OSC の発振周波数は数 % ズレても問題ないので、外付けコンデンサでも大丈夫です。
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ちなみに計算してみると ・・・
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温度補償型積層セラミックコンデンサの温度勾配は 30ppm/℃ です。
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周囲温度25℃を中心に±25℃の温度変化 (0〜50℃) があるとします。
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30ppm×25℃=750ppm=0.075% です。
±0.075% しか容量変化せず、全然問題ないです。
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音が出るようになりました!!!
2nd OSC が発振したのです。
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チタコンの故障モードは短絡に近い絶縁低下です。
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音は出ないが時々バリバリ雑音が出ていたのは、チタコンの絶縁状態が揺らいでいたためと思います。
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KT-900 では動作していてもバリバリ雑音が出る個体が多いそうな。
このチタコンの劣化が原因でしょう。
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こう考えると KT-900 では、本機での対策のようにコンデンサ外付けが正解と思います。
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記録写真
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左の写真は丸ピン IC ソケット化した [TR7020] で、手前の金属ケースに入ったコイルが [L5} です。
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右の写真は外付けした [82PF 温度補償型積層セラミックコンデンサ] です。
[L5] のハンダ面に付けています。
基板の裏側が茶色くなっていますが、これは汚れではありません。
基板製造時のフラックスです。
念のため。
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FM で音が出るようになったので、再度チェック
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[STEREO] ランプが点灯して、ステレオ感のある音が出ます。
パルスカウント検波特有のイイ音です。
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少しあった周波数ズレを簡易調整で直しました。
[REC CAL] ボタン ON でテスト信号が出ます。
音の出るチューナはイイねぇ〜〜
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[フロントパネルの天板側への折り返し部] [天板] に線キズがある
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清掃関連
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バリコン軸の清掃
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バリコン軸の接触不良は感じませんでしたが、念のため
KT-900 (2号機)
と同じ方法で清掃しました。
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やはり緑青錆が大量に湧き出て、除去しました。
数十年経ったバリコンは全て清掃しないとダメですね。
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リアパネルの端子類に薄いサビがある
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フロンパネル内にゴミがかなり溜まっいる
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ダイヤル照明 LED 化作業でのついでにフロントパネル内を清掃しました。
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到着時は薄汚れた感じでしたが、美しくなりました。
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全体は OA クリーナと一部無水アルコールで清掃しました。
ダイヤル照明とダイヤル指針の LED 化
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ダイヤル照明とダイヤル指針を LED 化したほうが美しくなるので
KT-900 (2号機)
と同じ方法で実施しました。
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[野暮ったく暗い電球色]→[明るくクッキリ・スッキリ] に変わりました。
再調整
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電圧チェック
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以下のように正常です。
VP |
標準値 |
実測値 |
判定 |
J83 |
+14V |
+13.5V |
〇 |
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調整結果
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KT-900 (1号機)
に記載の手順で調整しました。
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中心周波数 83MHz で1点トラッキング調整しました。
OSC コイルがワニスで固められており、2点トッラキングできない。
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指針のズレは、[76MHz で -0.05MHz] [83MHz でピッタリ] [90MHz で +0.1MHz] です。
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この程度のズレはバリコンの精度に依るので、やむを得ないです。
受信性能には全く問題ないです。
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FM ステレオ時の高調波歪率 (1kHz) は [WIDE:0.03%] [NARROW:0.04%] でした。
非常に良い
です。
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FM ステレオセパレーションなどは以下となりました。
良好な数値です。
項目 |
IF BAND |
stereo/mono |
L |
R |
単位 |
ステレオセパレーション (1kHz) |
WIDE |
stereo |
49 |
52 |
dB |
NARROW |
48 |
51 |
dB |
パイロット信号キャリアリーク |
WIDE |
stereo |
-63 |
-63 |
dB |
オーディオ出力レベル偏差 |
WIDE |
mono |
0 |
0 |
dB |
REC CAL 信号 |
WIDE |
mono |
419.9 |
Hz |
-6.1 |
dB |
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AM はなぜか?トラッキングが大きくズレていました。
AM は周波数が低いのでズレにくいはずなのだが???
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トラッキング調整などの再調整後はバッチリ受信します。
使ってみました
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世界で2番目の照明 LED 化 KT-900
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ダイヤルスケール部全体がイルミネーション照明されており綺麗
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最前面は強化ガラス
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チューニングノブは直径 41mm の無垢アルミ
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S メータは 7 レベルの LED バー表示
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T メータは [→ ←] の LED 表示
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感度や音質
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FM は TRIO らしい高解像度でカチッとした高音質です。
感度も良いです。
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やはり、パルスカウント検波の音は良いです。
別格です。
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AM は高感度で S/N が高いです。