TRIO KT-8000

TRIO KT-8000 が到着

2022年8月1日、鹿児島市の O さんから TRIO KT-8000 の修理依頼品が到着しました。

パルスカウント検波 の FM 専用チューナです。

この写真は修理&照明 LED 化です。 S メータが振れて、表示が現代的なホワイト表示になっているでしょ。



程度&動作チェック

  1. 依頼者のコメント

  2. 外観

  3. 電源 ON してチェック



カバーを開けてみました

  1. 基板の作りは良いです。

  2. フロントエンド

  3. IF 部

  4. 検波部

  5. MPX 部



リペア

  1. 電源 ON から時間が経つと、[stereo] ランプと音が途切れ途切れになる

    1. パルスカウント検波でよくある [2nd OSC コイル] [1.96MHz BPF] の不具合か?

      • 1.96MHz の IF 信号をオシロスコープで眺めると音が途切れるタイミングで波形が消えます。 これかな?

      • 2nd OSC の 8.74MHz 波形は綺麗です。 原因は2nd OSC コイルの [L16] ではない。

      • [1.96MHz BPF] 基板から外して分解してみましたが、腐食しやすいチタコンは使われていませんでした。 これでもない。

         

      • 結局、パルスカウント検波回路に不具合はないと結論しました。 これより前の回路に異常がありそう。

    2. パルスカウント検波の前にある IF 増幅 IC の [HA1137W] を交換してみました。

      • 交換して FM 放送を受信すると、良好に受信できました。 原因は [HA1137W] かな?

      • 半日聴いても正常で、これで決まりと思いかけた頃、また再発しました!!!

      • そうすると、[HA1137W] の前の回路に不具合があることになります。

      • 初心に返って、FM フロントエンドから順にオシロスコープで波形観測しよう。

    3. オシロスコープで波形観測して原因を探りました。

      • [FM フロントエンド]〜[L13] まで、波形はずっと正常です。 あれ〜〜

      • [HA1137W] の 1pin を観測すると、波形が出ていないです。 あれ〜〜

      • [L13] と [HA1137W] の 1pin までには IF GAIN 調整用の [VR2] しかありません。

      • まさか [VR2] の故障ではないよね?と思いつつチェックすると導通がありません。

      • [VR2] を取り外して DMM でチェックすると、3つのピンとも断線でした。

        • こんな壊れかたもあるんですね。 可変抵抗器で、初めての経験です。

        • この状態でもなんとか動作していたのは、この [VR2] がトリマコンデンサのような動きをしていたからだと思います。

    4. [VR2] を交換しました。

      • 正常に受信できるようになったのと同時に 感度が大幅アップ しました。

      • 1日ロングランしても全く正常です。 完全に直りました!!!

  2. 予防交換

  3. 照明を LED 化

  4. LED 化作業でフロントパネルをバラバラに分解したので、ついでにパネル内部を清掃しました。

  5. 全ての修理作業が終わったので再調整に入ったら、 さよなら逆転ホームランが!

  6. 今回の部品交換まとめ

  7. バリコン軸の接触回復



修理 2回目

  1. 1回目の修理後しばらく正常だったのですが、また障害が出ました

  2. MPX を疑って調査

  3. [HA11223] を交換しようと基板から取り外し

  4. マイグレーション除去済み [HA11223] を基板の [IC ソケット] に実装してみた

  5. 他に問題になりそうな日立製 IC はないかチェック

  6. [HA1457] を代替 IC で置き換えてみた



調整

写真の FM/AM 標準信号発生器 Panasonic VP-8175A (以下 SSG)、 FM Stereo 信号発生器 MEGURO MSG-2170、 周波数カウンタ ADVANTEST TR5822 を使って調整します。 10年も経つとコイルやトリマはズレます。

  

  1. 調整ポイント

    機能 種別 調整ポイント 調整内容
    フロントエンド L L1
    L2
    L3
    L4
    L5
    L6
    RF トラッキング
    TC TC1
    TC2
    TC3
    TC4
    TC5
    TC6
    L L7 OSC トラッキング
    L7 は空芯コイルで調整困難
    TC TC7
    IFT L11 IF
    IF VR VR1 IF GAIN (wide)
    VR2 IF GAIN (wide/narrow)
    VR3 S-Meter Max
    VR8 Muting Level
    VR10 ???
    IFT L12
    L13
    IF
    L14 Tuning Point(QR)
    DET L L16 2nd OSC (8.74MHz)
    MPX VR VR4 Separation (L)
    VR5 Separation (R)
    VR6 VCO
    VR7 Pilot Cancell
    VR9 [output level] ボリューム
    LPF FL3 LPF 19kHz (L)
    FL4 LPF 19kHz (R)

  2. テストポイント (TP)

    TP 接続先 内容 備考
    TP1 TP1〜GND 間 2nd IF (1.96MHz) [1.96MHz BPF]〜[パルスカウント検波ユニット] の間にあるジャンバー線

  3. 電源電圧チェッックポイント (VP)

    VP 標準値 実測値 判定
    電源基板 11pin (+B) +13.5V +13.3V
    電源基板 13pin (-B) -13.5V -13.6V

  4. FM 受信部の調整

    手順 SSG出力 KT-8000 の設定 調整箇所 TP 及び調整値 備考
    1 - muting : off
    mode : auto
    - -  
    2 SSG 出力を [R25] に注入する。[R25] は右端でフロントエンドの近く 同調点調整
    3 10.7MHz
    90dB
    無変調
    IF band : narrow L14 T メータ = センタ
    4 SSG 出力を通常のアンテナ端子接続に戻す。
    5 83MHz
    90dB
    無変調
    83MHz 受信
    IF band : narrow
    TC7 T メータ = センタ OSC トラッキング調整
    6 76MHz
    30dB
    無変調
    76MHz 受信
    IF band : narrow
    L1
    L2
    L3
    L4
    L5
    L6
    S メータ = 最大 RF トラッキング調整
    7 90MHz
    30dB
    無変調
    90MHz 受信
    IF band : narrow
    TC1
    TC2
    TC3
    TC4
    TC5
    TC6
    8 手順6と7を数回繰り返す
    9 83MHz
    40dB
    無変調
    83MHz 受信
    IF band : wide
    L11
    L12
    L13
    S メータ = 最大 IF 調整
    10 83MHz
    40dB
    無変調
    83MHz 受信
    IF band : narrow
    VR2 VR2 を中間に設定 IF wide GAIN 調整
    11 - S メータ = 記録
    12 83MHz 受信
    IF band : wide
    VR1 S メータ = 手順9と同一
    13 83MHz
    80dB
    無変調
    83MHz 受信
    muting : on
    IF band : wide
    VR3 S メータ = 5 S メータ調整
    14 L16 TP1 = 1.96MHz
    周波数カウンタで測定
    2nd IF 調整
    15 83MHz
    16dB
    mono 1kHz
    VR8 MUTING = ON/OFF 閾 MUTING レベル調整
    16 83MHz
    90dB
    stereo 1kHz L+R
    VR6 以下の [VCO 調整手順] を参照 VCO 調整
    17 VR7 オーディオ出力 = 19kHz 成分最小 パイロットキャンセル調整
    18 L11
    L12
    L13
    オーディオ出力 = 高調波歪率最小 IF 歪補正
    19 83MHz
    90dB
    stereo 1kHz R
    VR4 L ch. オーディオ出力 = 最小 wide
    セパレーション調整 (L)
    20 83MHz
    90dB
    stereo 1kHz L
    VR5 R ch. オーディオ出力 = 最小 wide
    セパレーション調整 (R)

  5. 調整結果



使ってみました

  1. デザイン

  2. 端子類

  3. 感度や音質

  4. その他



仕様ほか

  1. ドキュメント

  2. 仕様



    その他
    発売時期 1977年
    定価 69,800円