YAMAHA T-750

YAMAHA T-750

YAMAHA T-750 をゲット！

2013年8月18日、新潟県新発田市の N さんから YAMAHA T-750 を寄贈していただきました。ワンオーナとのことです。 [純正 AM ループアンテナ] [取扱説明書] が添付されていました。

デザインは T-950 を簡略化したもので、雰囲気はよく似ています。 T-850 というモデルはなかったので、T-950 が中級機、T-750 がローコスト機の位置付けです。

開梱直後の状態

外観
- 送られてきた梱包を開梱すると、バラバラと脚が転げ落ちました。脚が2個破損していました。
- フロントパネルはポツポツと数箇所キズがありますが、状態は良いほうです。
- リアパネルと底板に錆が出始めています。
- 天板は数箇所キズがありますが、状態は良いほうです。
電源を入れて動作確認
- ランプや数字表示は問題なく良好です。操作ボタンも良好に動作します。
- FM 受信
  - 我が家の強電界レベルでは問題なく受信できました。音の濁りもなく良好です。
  - 同調点ズレはなくステレオ受信できます。セパレーション感もあります。
- AM 受信
  - 特に問題なく受信できます。

カバーを開けてみました

全体の作りは良いです。写真をクリックすると拡大写真を表示できます。
- 電源トランスは安物臭くて小さいですが、これでも十分なのかもしれません。
- 使っている部品のロット番号より、本機は1982年製造品と判りました。電源ケーブルの製造マーキングも1982年でした。
IC を使用して合理化が図られています。
- JRC NJM4560 ・・・ Dual Operational Amplifier
- MITSUBISHI M54516P ・・・ 5-Unit 500mA Darlington Transistor Array
- MITSUBISHI M54459L ・・・ 1/20, 1/100 High Speed Divider
- NEC uPC577H ・・・ FM IF Amplifier
- SANYO LA3380 ・・・ FM PLL Stereo Multiplex
- SANYO LC7210 ・・・ PSL Electronic Tuning System
- YAMAHA IG-08530 ・・・ Single-Chip 4-Bit Microcomputer (SANYO LC6520C)
FM フロントエンド
- 3連バリキャップ方式で、以下の構成です。
- このフロントエンド以外は中級機にも匹敵する内容で、やはり3連バリキャップというのが残念です。
FM IF 部
- 帯域は単一で、以下のシンプルな構成です。
FM 検波部
- 広帯域レシオ検波です。
- 検波歪補正トリマがあります。
FM MPX 部
- ディスクリート構成です。 SANYO LA3380 という MPX IC を使用していますが、MPX スイッチング信号抽出だけに使っています。
- パイロットキャンセラー回路は実装されています。
- セパレーション調整は左右別々に調整できます。
AM 受信部
- 完全ディスクリート回路です。 2連バリキャップのフロントエンド構成でごく普通です。
プリセットメモリのバックアップ
- IC106 の左下側にある黄緑色の電気二重層コンデンサ 0.047F 5.5V で行います。

リペア

破損していた脚2個は手持ちの全く同じものと交換して直りました。右の写真は破損していた脚です。
再調整で新品時の性能に回復しました。
全体に OA クリーナで清掃しました。

調整

写真の FM/AM 標準信号発生器 Panasonic VP-8175A (以下 SSG)、 FM Stereo 信号発生器 MEGURO MSG-2170、周波数カウンタ ADVANTEST TR5822 を使って調整します。 10年も経つとコイルやトリマはズレます。

FM 受信部の調整

手順17, 19の F.FINE 間のダイオードというのは、チューナ基板の右側で最フロント側に [F.FINE] という文字とダイオードの向きがシルク印刷されています。 IC106, IC107 のフロント側の辺りです。このシルク印刷通りにダイオードをつなぐのです。

手順	SSG周波数	SSG出力	T-750 の設定	調整箇所	TP 及び調整値	備考
1	-	-	BAND : FM REC CAL : OFF TUNING MODE : MANUAL	-	-
2	-	-	90MHz 受信	フロントエンド内 OSC コア	フロントエンド VT 電圧 = 21.0V	VT high
3	-	-	76MHz 受信	-	フロントエンド VT 電圧 = 3.0V	VT low 確認のみ
4	76MHz	変調 : OFF 出力 : 30dB	76MHz 受信	フロントエンド内 2nd RF コイル	TR151-B 電圧 = 最大
5	90MHz	変調 : OFF 出力 : 30dB	90MHz 受信	フロントエンド内 2nd RF トリマ	TR151-B 電圧 = 最大
6	-	-	-	-	手順4と5を数回繰り返す	RF トラッキング調整
7	83MHz	変調 : OFF 出力 : 30dB	83MHz 受信	フロントエンド内 1st RF コイル	TR151-B 電圧 = 最大
8	83MHz	変調 : OFF 出力 : 30dB	83MHz 受信	フロントエンド内 IFT	TR151-B 電圧 = 最大
9	83MHz	変調 : OFF 出力 : 40dB	83MHz 受信	T104	T.M.～NVCC 間電圧 = 0V	レシオ検波調整
10	83MHz	変調 : MONO, 1kHz 100% 出力 : 90dB	83MHz 受信	VC101	オーディオ出力 = 高調波歪最小	モノラル歪調整
11	-	-	-	-	手順9と10を数回繰り返す
12	83MHz	Pilot 信号 : ON 変調 : OFF 出力 : 90dB	TUNING MODE : AUTO 83MHz 受信	VR104	STEREO ランプ = 点灯	MPX VCO 調整
13	83MHz	Pilot 信号 : ON 変調 : OFF 出力 : 90dB	83MHz 受信	VR103	オーディオ出力 = 19kHz 成分最小	パイロットキャンセル調整
14	83MHz	Pilot 信号 : ON 変調 : 1kHz 100% 出力 : 90dB	83MHz 受信	フロントエンド内 IFT	オーディオ出力 = 高調波歪最小	ステレオ歪調整 ±90°以内で調整
15	83MHz	Pilot 信号 : ON 変調 : R only, 1kHz 100% 出力 : 90dB	83MHz 受信	VR102	L ch. オーディオ出力電圧 = 最小	L セパレーション調整
16	83MHz	Pilot 信号 : ON 変調 : L only, 1kHz 100% 出力 : 90dB	83MHz 受信	VR101	R ch. オーディオ出力電圧 = 最小	R セパレーション調整
17	-	-	F.FINE 間にダイードを挿入	-	-
18	83MHz	Pilot 信号 : OFF 変調 : OFF 出力 : 90dB	83MHz 受信	VR105	表示の最下位が 30.0/30.1 を繰り返すよう調整	IF OFFSET 調整
19	-	-	F.FINE 間のダイオードを除去	-	-

AM 受信部の調整

手順	SSG周波数	SSG出力	T-750 の設定	調整箇所	TP 及び調整値	備考
1	-	-	BAND : AM REC CAL : OFF TUNING MODE : MANUAL	-	-
2	-	-	1620kHz 受信	T102	フロントエンド VT 電圧 = 25±0.2V	VT high
3	-	-	513kHz 受信	-	フロントエンド VT 電圧 = 5V 以下	VT low 確認のみ
4	630kHz	変調 : OFF 出力 : 40dB	630kHz 受信	T101	TR151-B 電圧 = 最大	ループアンテナを接続した状態で行うこと
5	1440kHz	変調 : OFF 出力 : 40dB	1440kHz 受信	VC102	TR151-B 電圧 = 最大	ループアンテナを接続した状態で行うこと
6	-	-	-	-	手順4と5を数回繰り返す	RF トラッキング調整
7	1080kHz	変調 : OFF 出力 : 40dB	1080kHz 受信	T103	TR151-B 電圧 = 最大	IF 調整

再調整結果

感度が若干向上しました。
ステレオセパレーションが向上し、YAMAHA 本来のナチュラルサウンドに復帰しました。

FM ステレオセパレーションとキャリアリークは以下となりました。良い数値です。

項目	L	R	単位
ステレオセパレーション	55	59	dB
パイロット信号キャリアリーク	-50	-51	dB
オーディオ出力レベル偏差 (MONO)	0	+0.27	dB
REC CAL	398.4 -6.7	398.4 -7.0	Hz dB

使ってみました

デザイン
- 表示器は全て LED です。ブラックの筐体に赤が主体の表示です。
- 側面にネジが出ない、底からカバーを留める方式です。
操作性
- シグナルメータ
  - シグナルメータは普通の機種と違ってシグナルクォリティメータです。電波の強さではなく S/N 比を表示します。
- ステーションメモリ
  - FM/AM ランダムに10局分しかないのでやや足りないです。
  - FM の場合、[周波数] 以外に [FM NOISE FILTER] [TUNING MODE] の状態を記憶します。
  - AM の場合、[周波数] 以外に [TUNING MODE] の状態を記憶します。
- [MEMORY] ボタンはイニシャルステーションのセットボタンを兼ねます。イニシャルステーションとは電源 ON 時に受信する放送局のことです。
  1. イニシャルステーションにしたい放送局を受信状態にします。
  2. [MEMORY] ボタンを長押しすると [INITIAL STATION SET] ランプがフリッカします。
  3. ここで [MEMORY] ボタンから手を離すと1の放送局がイニシャルステーションメモリにセットされています。
受信性能
- 音質はかなりの良音です。音に繊細感があります。芯の細い YAMAHA トーン そのものです。
- FM フロントエンドが3連バリキャップ方式なので、妨害電波排除能力が少々弱いです。音は良いのに、ここが残念です。
- AM の感度は良いです。音質は帯域が狭い普通の音です。
- クリアな電波が受信できる場所では、十分な高音質が得られお奨めできます。電波状況の悪い場所で使うには難があります。

仕様その他

取扱説明書

仕様は以下です。

FM チューナー部
受信周波数範囲	76.0～90.0MHz
実用感度 (75Ω)	MONO S/N 30dB : 0.9uV (10.3dBf)
S/N 比 50dB 感度	MONO : 3.2uV (15.3dBf) STEREO : 40uV (37.2dBf) FM NOISE FILTER ON : 32uV (35.4dBf)
イメージ妨害比 (84MHz)	55dB
IF 妨害比 (84MHz)	95dB
スプリアス妨害比 (84MHz)	80dB
AM 抑圧比 (IHF)	60dB
実効選択度 (IHF)	55dB
キャプチャーレシオ (IHF)	1.5dB
S/N 比 (IHF)	MONO : 90dB STEREO : 85dB
全高調波歪率 (1kHz)	MONO : 0.05% STEREO : 0.07%
ステレオセパレーション (1kHz)	58dB
周波数特性	50Hz～10kHz +0.2 -0.3dB
AM チューナー部
サブキャリア抑圧比	45dB
受信周波数範囲	513～1620kHz
実用感度 (IHF)	250uV (ループアンテナ)
選択度 (999kHz ±9kHz)	25dB
S/N 比	55dB
イメージ妨害比 (999kHz)	40dB
全高調波歪率 (400Hz)	0.3%
オーディオ
出力レベル/インピーダンス	FM (100% 変調, 1kHz) ： 500mV/4.0kΩ AM (30% 変調, 400Hz) ： 150mV/4.0kΩ REC CAL (333Hz) ： 250mV/4.0kΩ
付属機構
付属機構	①FM/AM ランダム10局プリセット ②オートサーチ・チューニング (UP/DOWN) ③REC CAL ④FM NOISE FILTER
総合
定格電源電圧・周波数	AC100V, 50/60Hz
定格消費電力	10W
AC アウトレット	300W MAX
外形寸法	435(W)×72(H)×316(D)mm
重量	3.8kg
付属品	①出力コード ②FM T 字型簡易アンテナ ③AM ループアンテナ ④ステーションカード
その他
発売時期	1983年
定価	39,800円