ONKYO T-427R

ONKYO T-427R をゲット！

2009年7月29日、私のチューナページのファンより ONKYO T-427R を寄贈いただきました。 薄型で美しいデザインです。

FM 帰還方式・サーボロックチューナで、 T-429R と並んで ONKYO 最後の本格的アナログチューナです。

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早速、程度＆動作チェック

1. 外観
   
   
   • 全体に超綺麗です。 30年物くらいビンテージ品で、この綺麗さは奇跡だと思います。
     
     
   • キズはほぼ見当たりません。 よくよく見ると右サイドにうっすらと線傷がいくらかありますが、許せる範囲内の美品です。
     
     
   • リアパネルの端子に若干曇りがありましたが、無水アルコールで綺麗になりました。
     
     
2. 入手した状態のまま電源 ON してチェックしました
   
   
   • ランプ切れはありません。
     
     
   • FM/AM とも受信良好です。 FM STEREO ランプも点灯します。
     
     

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カバーを開けてみました

1. 基板の作りは良いです。 写真をクリックすると拡大写真を表示できます。
   
   
   • アナログチューナと言っても最後期の製品なので、使用している IC や回路はシンセサイザーチューナと変わりません。
     
     
   • 抵抗など少し大き目の部品を使っており、点検用の底板があります。 このため、メンテナンスが楽です。
     
     
2. IC を使用して合理化が図られています。
   
   

   メーカ	IC	機能
   HITACHI	HA1197	AM Radio Receiver System
   	HA12016	FM Stereo Multiplex Decoder
   JRC	NJM4558	Dual High-Gain Operational Amplifier
   NEC	uPC1163H	FM IF Amplifier
   SANYO	LA1235	FM IF System
   TOSHIBA	TC4066B	Quad Analog Switch/Multiplexer (4066B と同じ)

   
   
   • 使用 IC のロット番号より、この T-427R は1982年製と判明しました。 電源ケーブルの製造マーキングも1982年でした。
     
     
3. FM フロントエンド
   
   
   • 4連バリコンで、以下の構成です。 コイルにコア調整型を使っており、全ての同調回路で2点トラッキングが容易です。
     
     
   • BOOST OUT 時は以下の構成です。
     
     
     (アンテナ)→[同調]→[同調]→[同調]→[Mxer (Dual Gate FET)]←[OSC 同調 (TR/FET)]
     
     
   • BOOST IN 時は以下の構成です。
     
     
     (アンテナ)→[同調]→ [Dual Gate FET] →[同調]→[同調]→[Mxer (Dual Gate FET)]←[OSC 同調 (TR/FET)]
     
     
4. IF 部
   
   
   • WIDE 時は以下の構成です。
     
     
     (フロントエンド IFT)→[FET]→[UP-CF]→[uPC1163H]→[FET]→[IFT]→[LA1235]
     
     
   • NARROW 時は以下の構成です。
     
     
     (フロントエンド IFT)→[FET]→[UP-CF]→[uPC1163H]→ [CF]→[CF]→[uPC1163H→[CF] →[FET]→[IFT]→[LA1235]
     
     
5. FM 検波部
   
   
   • [LA1235] を使ったクォードラチュア検波です。
     
     
   • ONKYO では 広帯域ウルトラリニア検波器 と言ってますが、実体はクォードラチュア検波です。
     
     
   • この頃はクォードラチュア検波が最高の検波回路と考えられていました。
     
     
6. MPX 部
   
   
   • [HA12016] で構成した PLL MPX です。
     
     
7. AM 受信部
   
   
   • [HA1197] で全てを構成します。
     
     
   • 2連バリコン方式でトラッキング調整が可能です。
     
     

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調整

写真の FM/AM 標準信号発生器 Panasonic VP-8175A (以下 SSG)、 FM Stereo 信号発生器 MEGURO MSG-2170、 周波数カウンタ ADVANTEST TR5822 を使って調整します。 10年も経つとコイルやトリマはズレます。

　　

1. 電圧チェックポイント (VP)
   
   

   VP	標準値	実測値
   +12V	+12V	+12.7V
   +B	+14V	+14.0V

   
   
2. FM 受信部の調整
   
   

   手順	SSG出力	T-427R の設定	調整箇所	TP 及び調整値	備考
   1	-	SELECTOR : FM AIR CHECK : OFF MUTING : OFF BOOST : ON SELECTIVITY : NARROW	-	-
   2	83MHz 25dB 前後 mono 1kHz	83MHz 付近で受信	-	オシロスコープで オーディオ出力波形を観測し、 サイン波ピーク上下のノイズ成分が 同じレベルになるよう指針を合わせる	同調点(仮)調整
   3	83MHz 90dB 無変調		L102	[T.METER] 電圧 = 0±10mV
   4	76MHz 90dB 無変調	76MHz 受信	L004	[T.METER] 電圧 = 0±10mV	OSC トラッキング調整
   5	90MHz 90dB 無変調	90MHz 受信	TC001
   6	手順4〜5を数回繰り返す
   7	76MHz 30dB 無変調	76MHz 受信	L001 L002 L003	[S.METER] 電圧 = 最大	RF トラッキング調整
   8	83MHz 30dB 無変調	83MHz 受信	[バリコン] RF トリマ×3
   9	手順7〜8を数回繰り返す
   10	83MHz 30dB 無変調	83MHz 受信	L006 T101	[S.METER] 電圧 = 最大	IF 調整
   11	83MHz 90dB mono 1kHz	83MHz 受信 SELECTIVITY : WIDE	L103	オーディオ出力 = 高調波歪最小	QR 検波調整
   12			L102	[T.METER] 電圧 = 0±10mV
   13	手順11〜12を数回繰り返す
   14	-	SELECTOR : FM AIR CHECK : OFF MUTING : ON BOOST : ON SELECTIVITY : WIDE	-	-
   15	83MHz 90dB stereo 1kHz L+R	83MHz 受信	R212 (VCO)	下の [VCO 調整手順] を参照	VCO 調整
   16			L006 T101	オーディオ出力 = 高調波歪率最小	IF 歪補正
   17	83MHz 90dB stereo 1kHz R/L		R203 (Sep.)	L/R ch. オーディオ出力 = 最小	セパレーション調整

   
   
   • VCO 調整手順
     
     

     手順	備考
     1	R212 を反時計方向に回し切る
     2	R212 を徐々に時計方向に回し、ディスプレイの [STEREO] 表示が点灯した位置を記録する
     3	R212 を時計方向に回し切る
     4	R212 を徐々に反時計方向に回し、ディスプレイの [STEREO] 表示が点灯する位置を記録する
     5	R212 を [手順2] と [手順4] の中間に設定する

     
     
3. AM 受信部の調整
   
   

   手順	SSG出力	T-427R の設定	調整箇所	TP 及び調整値	備考
   1	-	SELECTOR : AM AIR CHECK : OFF MUTING : ON SELECTIVITY : NARROW	-	-
   2	600kHz 60dB 無変調	600kHz 受信	L152	[S.METER] 電圧 = 最大	OSC トラッキング調整
   3	1400kHz 60dB 無変調	1400kHz 受信	[バリコン] OSC トリマ
   4	手順2〜3を数回繰り返す
   5	600kHz 40dB 無変調	600kHz 受信	L151	[S.METER] 電圧 = 最大	RF トラッキング調整
   6	1400kHz 40dB 無変調	1400kHz 受信	[バリコン] RF トリマ
   7	手順5〜6を数回繰り返す
   8	1000kHz 40dB 無変調	1000kHz 受信	L153	[S.METER] 電圧 = 最大	IF 調整

   
   
4. 調整結果
   
   
   • 全体にそれほど調整ズレはありませんでした。
     
     
   • ステレオセパレーションは40dB 台で実用レベルです。
     
     

   項目	IF BAND	L	R	単位
   ステレオセパレーション (1kHz)	WIDE	43	44	dB
   	NARROW	22	22	dB
   パイロット信号キャリアリーク	WIDE	-69	-68	dB
   オーディオ出力レベル偏差 (MONO)		0	-0.10	dB
   AIR CHECK 信号		480.5		Hz
   		-9.3	-9.3	dB

   
   

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使ってみました

1. 薄型でイルミネーションが美しいデザイン性の優れたチューナ
   
   
   • フロントパネルはかなり分厚いアルミ材のヘアライン仕上げで良好です。
     
     
   • 高さが 99mm でスリム感があります。
     
     
   • 電源を入れるとダイヤルスケールのイルミネーションが美しいです。
     
     
   • ダイヤルの動きはクルクルと軽く回る感じではなく重目ですが、それなりにスムーズです。
     
     
   • ダイヤルインディケータやメータに視角誤差は少なく、斜めから見ても同調操作できます。
     
     
   • S メータと T メータに加えて DEVIATION メータもある3メータ構成です。
     
     
   • DEVIATION メータにはピークホールド機能もあるようで、ピークを観測しやすいです。
     
     
2. 端子類
   
   
   • FM アンテナ入力は F 端子なので妨害電波を拾いにくいです。
     
     
   • オーディオ出力端子は固定出力と可変出力があります。
     
     
   • 可変出力はフロントパネルの [OUTPUT LEVEL] で音量を調節できます。
     
     
   • この頃のチューナの流行であったマルチパス観測出力があります。
     
     
3. 機能関連
   
   
   • タッチセンサ内蔵で、[同調] ノブに手を触れるとサーボロックが解除され、手を離すと自動的にサーボロックがかかります。
     
     
     • サーボロックの効きかたは、かなり素早いです。 スッと T メータのセンタに引き込まれます。
       
       
   • FM 受信で T メータとサーボロックが効くのはもちろんですが、AM 受信でもこれらが有効です。
     
     
   • [AIR CHECK] スイッチ ON で FM 50% 変調に相当するテスト音が出ます。 録音機のレベル合わせに使えます。
     
     
   • [MUTING/LOCK] スイッチで MUTING ON/OFF に切換できます。
     
     
     • MUTING OFF ではサーボロックも解除となり、同時にモノラル受信となります。
       
       
   • [BOOST] スイッチで FM フロントエンドの高周波増幅段を IN/OUT (ON/OFF) に切換できます。
     
     
   • [FM/AM SELECTIVITY] スイッチで IF BAND を WIDE/NARROW に切換できます。 通常は WIDE で使います。
     
     
   • [SELECTOR] スイッチで受信バンドを FM/AM に切換できます。
     
     
4. 受信性能＆音質
   
   
   • 感度や妨害波排除能力は問題なく良いです。
     
     
   • 音はクォードラチュア検波特有の柔らかい音質です。
     
     
   • デザインや機能が良いので満足できます。
     
     

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S メータ

• FM アンテナ入力レベルと S メータの振れの相関関係を測定してみました。
  
  
• これを見ると、S/N 良く受信するためには、レベル90程度は必要のようです。
  
  

  S メータ	アンテナ入力 (dB)
  20	22
  40	29
  60	45
  80	54
  100	74〜

  
  

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仕様ほか

1. ドキュメント
   
   
   • T-427R 取扱説明書
     
     
2. 仕様
   
   

   FM 受信部
   受信周波数範囲	76〜90MHz
   実用感度 (75Ω/IHF)	RF Booster out : 1.75uV/16.1dBf RF Booster in : 0.9uV/10.3dBf
   S/N 比 50dB 感度 (75Ω/IHF)	RF Booster in : 2.0uV/17.3dBf
   相互変調妨害比 (±1MHz/±2.5MHz)	RF Booster out : 90dB/100dB RF Booster in : 85dB/95dB
   イメージ妨害比 (83MHz)	RF Booster out : 90dB RF Booster in : 90dB
   IF 妨害比 (83MHz)	RF Booster out : 100dB RF Booster in : 120dB
   S/N 比	mono : 84dB stereo : 80dB
   スプリアス妨害比	RF Booster out : 110dB RF Booster in : 120dB
   2信号選択度 (±400kHz 離調)	IF Wide : 40dB IF Narrow : 85dB
   AM 抑圧比	IF Wide : 62dB IF Narrow : 50dB
   キャプチャーレシオ	IF Wide : 1.0dB IF Narrow : 2.0dB
   歪率 (50Hz〜10kHz, WIDE)	mono, IF Wide, 50Hz〜10kHz : 0.009% mono, IF Narrow, 50Hz〜10kHz : 0.15% stereo, IF Wide, 400Hz : 0.02% stereo, IF Narrow, 400Hz : 0.4% stereo, IF Wide, 50Hz〜10kHz : 0.08% stereo, IF Narrow, 50Hz〜10kHz : 0.6%
   周波数特性	20Hz〜15kHz +0.2dB -0.8dB
   アンテナインピーダンス	75Ω不平衡型
   ステレオセパレーション (WIDE)	IF Wide, 1kHz : 57dB IF Narrow, 1kHz : 45dB IF Wide, 100Hz〜10kHz : 47dB IF Narrow, 100Hz〜10kHz : 40dB
   キャリアリーク	-65dB
   出力電圧/インピーダンス	可変出力 : 0〜800mV/3.3kΩ 固定出力 : 500mV/5.6kΩ
   AM 受信部
   実用感度	200uV/m (ループアンテナ)
   イメージ妨害比/IF 妨害比	57dB/42dB (1000kHz)
   2信号選択度	IF Wide : 20dB IF Narrow : 45dB
   S/N 比	60dB
   歪率	IF Wide : 0.3% IF Narrow : 0.5%
   出力電圧/インピーダンス	可変出力 : 0〜260mV/3.3kΩ 固定出力 : 150mV/5.6kΩ
   総合
   電源電圧	AC100V, 50/60Hz
   定格消費電力 (電気用品取締法)	27W
   外形寸法	435(W)×99(H)×393(D)mm
   重量	5.2kg
   別売	側板 CW-9 (2枚1組 \5,000)
   その他
   発売時期	1982年
   定価	49,800円

   
   

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