Pioneer TX-9900

Pioneer TX-9900 が到着

2023年1月5日、埼玉県入間市の H さんより Pioneer TX-9900 の修理依頼品が到着しました。

14万円もする高級 FM 専用チューナ です。

このチューナはバリコン式ですが クリスタルロック で水晶発振器の精度に同調するという珍しい方式です。



程度&動作チェック

  1. 修理依頼者のコメント

  2. 外観

  3. 入手した状態のまま電源 ON してチェックしました



カバーを開けてみました

  1. カバーを開けてみるとゴミが結構堆積しています。

  2. フィラメントランプの使用状況は以下でした。

  3. 高級機にふさわしく、作りは素晴らしく良いです。

     



  4. フロントエンド (FE)

  5. APC 部

  6. IF 部

  7. PBLD 部

  8. QR&MPX 部



APC の動作原理

  1. APC (Automatic Phase Control) とはクリスタルロックのことです。

  2. 以下の回路図は Pioneer F-26 の APC ユニットですが、基本的には TX-9900 も同じです。 回路もほぼ同じようです。

    1. OSC 発振周波数は Q1 に取り込まれます。

    2. Q2, Q3, Q4 で 100kHz サンプリングします。

    3. R14, R15, R16, C8, C9 で LPF を構成します。

    4. Q5, Q6 で DC 出力化して、この電圧を OSC バリキャップダイオードに帰還します。

    5. 1〜4 を繰り返し周波数ロック(クリスタルロック)します。


  3. TX-9900 と F-26 の APC ユニットの違い



リペア

  1. [T メータ] は [-] [センタ] [+] の3値にしかならない

  2. 放送に対してダイヤル指針が全体的に -0.1MHz ズレている

  3. バリコン軸の接触不良回復

  4. [同調] [MUTING / IF BAND] ノブはグリスが効き過ぎてかなり重い

  5. フロントパネル内のゴミを清掃



調整

写真の FM/AM 標準信号発生器 Panasonic VP-8175A (以下 SSG)、 FM Stereo 信号発生器 MEGURO MSG-2170、 周波数カウンタ ADVANTEST TR5822 を使って調整します。 10年も経つとコイルやトリマはズレます。

  

  1. 調整ポイント

     

    基板 種別 調整ポイント 調整内容
    フロントエンド L L101
    L102
    L103
    L104
    L105
    L106
    RF トラッキング
    TC TC101
    TC102
    TC103
    TC104
    TC105
    TC106
    L L107 OSC トラッキング
    TC TC107
    IFT IFT101 IF
    APC L L201 OSC 周波数増幅の前段
    L202
    VR VR201 100kHz サンプリングクロックレベル
    VR202 DC バランス
    VR203 OSC 取込アンプのゲイン調整
    TC TC201 6.4MHz ベース周波数微調整
    IF IFT IFT301
    IFT302
    IFT303
    IFT304
    IFT305
    WIDE IF
    IFT306 NARROW IF
    VR VR301 NARROW ゲイン
    QR&MPX L L401
    L402
    アンチバーディフィルタ
    IFT IFT401 QR 検波 (同調点)
    VR VR401 LOCK IN 中点設定 (AFC 中点電圧)
    VR402 MUTING LEVEL 2 (WIDE)
    VR403 S メータレベル
    VR404 MUTING LEVEL 1 (WIDE/NARROW)
    VR405 MPX VCO
    VR406 WIDE セパレーション
    VR407 NARROW セパレーション
    PBLD IFT IFT501 PBLD 検波前段
    VR VR501 PBLD 検波 NULL
    PS VR VR601 +13V 電圧調整
    VR602 -13V 電圧調整

  2. テストポイント (TP)

    No. 基板 TP 接続先 内容 備考
    1 APC T3 T3〜GND 間 Beat 出力 オシロスコープで観測
    2 T8 T8〜GND 間 AFC 出力電圧 バリキャップ印加電圧
    3 TP10 TP10〜GND 間 6.4MHz ベース周波数出力 6.4MHz±100Hz
    4 QR&MPX TP3 TP3〜TP4 間 同調点電圧 0±1mV
    5 TP4
    6 TP50 TP50〜GND 間 パイロット信号 19kHz
    7 TP56 TP56〜GND 間 S メータ 受信レベル
    8 PBLD TP501 TP501〜GND 間 PBLD 検波 NULL 0±5mV

  3. 電圧チェックポイント (VP)

    VP 標準電圧 実測電圧 判定 備考
    TP22 +13V +13.0V FE, APC, IF, PBLD, QR&MPX
    TP17 -13V -13.0V APC, PBLD, QR&MPX
    TP14 +5V +4.99V APC, QR&MPX

  4. FM 受信部の調整

    手順 SSG出力 TX-9900 の設定 調整箇所 TP 及び調整値 備考
    1 - MUTING : WIDE 1
    MODE : AUTO
    -  
    2 83MHz
    90dB
    mono 1kHz
    83MHz 受信 TC201 [APC]
    TP10 = 6.4MHz±100Hz
    APC ベース周波数微調整
    3 VR203 [APC]
    T3〜GND 間 = 1.5Vp-p
    オシロスコープで観測
    APC ゲイン調整
    4 VR201 VR201 を
    反時計回りに回し切る
    APC 機能を抑止
    5 VR202 [APC]
    T8〜GND 間 = 7.20V±30mV
    APC DC バランス調整
    6 VR401 [LOCK IN] = 点灯 [LOCK IN] ランプ点灯調整
    7 76MHz
    40dB
    mono 1kHz
    76MHz 受信 L107 S メータ = 最大 OSC トラッキング調整
    ダイヤル指針とダイヤル周波数を
    合わせるのが目的
    8 90MHz
    40dB
    mono 1kHz
    90MHz 受信 TC107
    9 手順7と8を数回繰り返す
    10 76MHz
    40dB
    mono 1kHz
    76MHz 受信 L101
    L102
    L103
    L104
    L105
    L106
    S メータ = 最大 RF トラッキング調整
    11 90MHz
    40dB
    mono 1kHz
    90MHz 受信 TC101
    TC102
    TC103
    TC104
    TC105
    TC106
    12 手順10と11を数回繰り返す
    12 83MHz
    90dB
    mono 1kHz
    83MHz 受信 IFT401 [QR&MPX]
    TP3〜TP4 間 = 0±1mV
    同調点調整
    13 VR501 TP501〜GND 間 = 0±5mV PBLD 検波 NULL 調整
    14 VR201 [LOCK IN] = 点灯 APC 機能回復
    [LOCK IN] が点灯するまで
    VR201 を時計回りに回す
    15 83MHz
    90dB
    stereo 1kHz L+R
    VR405 下の [VCO 調整手順] を参照 VCO 調整
    16 IFT101
    IFT301
    IFT302
    IFT303
    IFT304
    IFT305
    オーディオ出力 = 高調波歪最小 WIDE
    stereo 高調波歪調整
    17 - MUTING : NARROW 1 -  
    18 83MHz
    90dB
    stereo 1kHz L+R
    83MHz 受信 IFT306 オーディオ出力 = 高調波歪最小 NARROW
    stereo 高調波歪調整
    19 - MUTING : WIDE 1 -  
    20 83MHz
    90dB
    stereo 1kHz R/L
    83MHz 受信 VR406 L/R ch. オーディオ出力 = 最小 WIDE
    セパレーション調整
    21 - MUTING : NARROW 1 -  
    22 83MHz
    90dB
    stereo 1kHz R/L
    83MHz 受信 VR407 L/R ch. オーディオ出力 = 最小 NARROW
    セパレーション調整
    23 83MHz
    99dB
    無変調
    83MHz 受信 VR403 S メータ = ちょうどフル (10) S メータ調整

  5. 調整結果



使ってみました

  1. デザイン

  2. 性能

  3. 音質

  4. 素晴らしいチューナ



仕様など

  1. ドキュメント

  2. 仕様



  3. 発売情報

    発売時期 1974年
    定価 140,000円