McIntosh MR71

McIntosh MR71 がやってきた!

McIntosh が1965年に発売した真空管方式 FM 専用チューナーです。 約半世紀前の製品です。

岡山県の N さんよりの修理依頼品です。 通常、修理だけの依頼は受けないのですが、大昔の超高級チューナーということでで興味が沸き、特別に受けました。

2010年6月28日に無事到着しました。

N さんのコメントは以下です。

  1. ガサガサ?ゴソゴソ?のノイズ音が発生します。 某社に修理依頼したところ、ノイズ音は SCA filter のようだが修理不能といわれました。

  2. SCA fileter とは修理できないものでしょうか? 又は代替パーツなどは無いものなのでしょうか?

  3. 修理したときの伝票を添付しました。





早速、程度&動作チェック

  1. 外観

  2. 入手した状態のまま電源 ON してチェックしました



カバーを開けてみました

  1. カバーを開けたと言っても真空管式チューナーなので、デフォールトで天板カバーがありません。 オプションで木製カバーはあったようです。

  2. 上側から見たところです。 写真をクリックすると拡大写真を表示できます。

  3. 背面の端子群です

  4. 右サイド側より見たところです。

  5. 左サイド側より見たところです。

  6. 底板を外して下側からより見たところです。 写真をクリックすると拡大写真を表示できます。



回路構成

  1. ブロックダイヤグラムは以下です。



  2. FM フロントエンド

  3. FM IF 部

  4. 検波部

  5. MPX 部



修理



調整

写真の FM/AM 標準信号発生器 Panasonic VP-8175A (以下 SSG)、 FM Stereo 信号発生器 MEGURO MSG-2170、 周波数カウンタ ADVANTEST TR5822 を使って調整します。 10年も経つとコイルやトリマはズレます。

  

  1. FM 受信部の調整

    手順 SSG周波数 SSG出力 MR71 の設定 調整箇所 TP 及び調整値 備考
    1 - - MUTING : OUT
    MODE SELECT : MONO
    AUTO FREQ CONTROL : MIN
    - -  
    2 10.7MHz 30dB V2(12AT7)-7pin に 0.01uF
    を介して SSG 出力を注入
    T1, T2, T3, T4
    上下コア
    TP1 電圧 = 最大 IF 調整
    マイナス電圧
    3 10.7MHz 30dB V2(12AT7)-7pin に 0.01uF
    を介して SSG 出力を注入
    T5 下コア T5-6pin 波形 = 最大 マルチパス検出部調整
    4 10.7MHz 30dB V2(12AT7)-7pin に 0.01uF
    を介して SSG 出力を注入
    T5 上コア D4〜R42 接続点電圧 = 0V マルチパス検出部調整
    5 10.7MHz 30dB V2(12AT7)-7pin に 0.01uF
    を介して SSG 出力を注入
    T6 下コア T6-6pin 波形 = 最大 検波部調整
    6 10.7MHz 30dB V2(12AT7)-7pin に 0.01uF
    を介して SSG 出力を注入
    T6 上コア TP2 電圧 = 0V 検波部調整
    7 76MHz 30dB 76MHz 受信 L4 TP1 電圧 = 最大  
    8 90MHz 30dB 90MHz 受信 C5 TP1 電圧 = 最大  
    9 - - - - 手順7と8を数回繰り返す OSC トラッキング調整
    10 76MHz 30dB 76MHz 受信 L1, L2, L3 TP1 電圧 = 最大  
    11 90MHz 30dB 90MHz 受信 C2, C3, C4 TP1 電圧 = 最大  
    12 - - - - 手順10と11を数回繰り返す RF トラッキング調整

  2. MPX 部の調整

    手順 SSG周波数 SSG出力 MR71 の設定 調整箇所 TP 及び調整値 備考
    1 - - MUTING : IN
    MODE SELECT : STEREO AUTO
    AUTO FREQ CONTROL : MIN
    - -  
    2 83MHz 90dB
    Pilot : ON
    無変調
    83MHz 受信 T7 上下コア
    L5
    V15(12AU7)-7pin 波形 = 最大 V15(12AU7)-7pin に100kΩを
    介してオシロスコープを接続
    3 83MHz 90dB
    Pilot : ON
    1kHz 100% 変調
    83MHz 受信 T8 下コア T8-1pin 波形 = 最大  
    4 83MHz 90dB
    Pilot : ON
    1kHz 100% 変調
    83MHz 受信 T8 上コア オーディオ出力 = 高調波歪最小  
    5 83MHz 90dB
    Pilot : ON
    R/L ch. only 1kHz
    83MHz 受信 L5 L/R ch. オーディオ出力電圧 = 最小 セパレーション調整

  3. 調整結果

    1. 調整ズレしまくりでした。 性能はガタガタでした。

    2. 特にステレオセパレーションは数 dB しかありませんでした。 再調整にて大きくセパレーションなどが向上しました。

    3. 調整中にもう1箇所故障が見つかりました。 T5 に内蔵されている 1〜2pin 間のコンデンサの容量抜けです。 100PF を外付けして直りました。

    項目 L R 単位
    ステレオセパレーション 42 36 dB
    ステレオ時の高調波歪率 (1kHz) 0.66 0.83 %
    パイロット信号キャリアリーク -63 -48 dB
    オーディオ出力レベル偏差 (MONO) 0 -0.63 dB



使ってみました

  1. 外観

  2. 感度&音質



仕様&その他

  1. 電網検索すると簡単に以下のドキュメントが手に入ります。 よほど伝説的チューナーなんでしょう。

  2. 以下が仕様です。