Pioneer F-C3 (2号機)

Pioneer F-C3 (2号機) をゲット！

1. 2013年1月22日、ヤフオクにて Pioneer F-C3 のジャンク品を税込1,000円にて落札しました。
   
   
   • F-C3 は内部の基板の作りが非常に良いです。 同社の同じ性能の F-03 と比べても上です。
     
     
   • FM はフロントエンドが4連バリキャップなど、基本性能が確保されています。
     
     
   • AM は音が高域まで延びている AM 受信超優秀機です。
     
     
2. FM で「セパレーション調整ができない」対策を検討する目的での入手です。
   
   
3. 出品者のコメントは以下です。
   
   
   • ワンオーナ品です。
     
     
   • FM/AM ともに受信できますが、FM がステレオにならないです。
     
     
   • 純正の FM 簡易アンテナ、AM ループアンテナを添付します。
     
     

---

外観および動作チェック

1. 外観
   
   
   • ワンオーナだけあって、外観はかなり綺麗です。 フロントパネルおよびリアパネルにキズやサビは見当たりません。
     
     
   • 天板はキズ等はないのですが、若干、上に載せていた機材の脚形が薄っすらと見えます。 気付かない程度です。
     
     
   • 純正の FM 簡易アンテナ、AM ループアンテナが添付されているのはワンオーナならではです。 特に「純正 AM ループアンテナ」が貴重です。
     
     
   • カバーを開けてみると、内部は綺麗ですが、全体的にススのような汚れがあります。 これは軽い清掃で除去できました。
     
     
   • 使っている部品のロット番号および AC ケーブルマーキングが1993年です。 製造年は1993年に間違いないです。
     
     
2. 電源を入れてみる
   
   
   • 問題なく電源が入りました。 FL 表示の輝度も十分です。
     
     
   • 各ボタン操作は正常です。 プリセットメモリも保持されます。
     
     
   • AM はステレオになりましたが、FM はステレオになりません。
     
     
     • FM 同調点が大きくずれていた (0V のところ、4.5V) ので、軽く FM 同調点調整をやってみたら、ステレオ受信可能になりました。
       
       
     • 1993年製造ですから、今年 (2013年) で20年です。 この程度のずれがあってもおかしくないです。
       
       

---

FM stereo 復調部の調査

1. F-C3 は FM stereo 復調部にセパレーション調整ポイントがないことが問題と思っています。 解決のために、まずはこの部分を回路図化してみました。 右の回路図をクリックすると大きな回路図が pdf で表示できます。
   
   
   • R160 649kΩを可変抵抗にするとセパレーション調整できるようになります。 この場合、改造が必要になります。
     
     
   • セパレーション調整を今あるものだけでやることを考えると、VCO 調整 (VR101) をピッタリから少しずらすと言うトリッキーな方法が思いつきます。
     
     
     • すなわち、復調スイッチング信号の位相を調整することになります。
       
       
     • 逆に言うと PLL 同期と言ってもアナログ回路なので、これで位相が動いてしまうのが悲しいところです。 絶対的な手法は DSP 処理 でしょう。
       
       
   • VCO 調整ですから大きくずらすことはできません。 やってみないとどの程度の効果が出るか判りません。
     
     
     • やったところ 50dB 近くのセパレーションを獲得できそうでした。
       
       
     • この方法で次項の調整方法を見直すことにします。 改造しないで済みそうです。
       
       

---

調整

写真の FM/AM 標準信号発生器 Panasonic VP-8175A (以下 SSG)、 FM Stereo 信号発生器 MEGURO MSG-2170、 周波数カウンタ ADVANTEST TR5822 を使って調整します。 10年も経つとコイルやトリマはズレます。

　　

1. FM 受信部の調整
   
   
   • 手順6だけが 前の調整方法 と変わっています。
     
     

     手順	SSG周波数	SSG出力	F-C3 の設定	調整箇所	TP 及び調整値	備考
     1	-	-	FM/AM : FM RF ATT : OFF Mono : OFF	-	-
     2	83MHz	変調 : OFF 出力 : 30dB	83MHz 受信	フロントエンド RF コイル×3 IFT	TP5 電圧 = 最大	S-METER フロントエンド調整
     3	83MHz	変調 : MONO 1kHz 出力 : 90dB	83MHz 受信	T101	オーディオ出力 = 高調波歪最小	WaveSpectraで観測
     4	83MHz	変調 : MONO 1kHz 出力 : 90dB	83MHz 受信	T102	TP1〜TP2 間電圧 = 0V	T-METER ±5mV なら良い
     5	-	-	-	-	手順3と4を数回繰り返す	クォードラチュア検波調整
     6	83MHz	変調 : 1kHz R/L only Pilot : ON 出力 : 90dB	83MHz 受信	VR101	L/R ch. オーディオ出力 = 最小	ステレオセパレーション調整 stereo ランプが点灯する範囲で実施のこと

     
     
2. AM 部の調整
   
   

   手順	SSG周波数	SSG出力	F-C3 の設定	調整箇所	TP 及び調整値	備考
   1	-	-	FM/AM : AM AM mode : wide	-	-
   2	-	-	1602kHz 受信	L105 黄コア	TP3 電圧 = 7.5V	VT high
   3	-	-	531kHz 受信	-	TP3 電圧 = 1.2V	VT low (確認のみ)
   4	1071kHz	変調 : OFF 出力 : 30dB	1071kHz 受信	L105 黒コア	TP5 電圧 = 最大	S-METER RF 調整
   5	1071kHz	変調 : OFF 出力 : 30dB	1071kHz 受信	T101	TP5 電圧 = 最大	S-METER IF 調整

   
   
3. 調整結果
   
   
   1. FM の測定値は以下です。 ステレオセパレーションは 47dB 獲得でき合格です
      
      
   2. パイロット信号キャリアリークが悪いのはキャンセル回路もフィルタもないためです。 仕方ないです。
      
      

      項目	L	R	単位
      ステレオセパレーション	47	47	dB
      パイロット信号キャリアリーク	-35	-32	dB
      高調波歪率 (1kHz)	0.04	0.04	%
      オーディオ出力レベル偏差 (MONO)	0	+0.18	dB

      
      

---

使ってみました

1. FM 受信
   
   
   • フロントエンドは4連バリキャップなので、妨害波排除能力が十分です。 感度も良いです。
     
     
   • ステレオセパレーションが良くなると、音の解像度感がまるで違ってきます。
     
     
2. AM 受信
   
   
   • 純正 AM ループアンテナが貴重で、これを使うと感度が良いです。
     
     
   • AM の音質は定評通りビックリするほど良いです。
     
     

---