YAMAHA T-2 (4号機) が到着!
2023年5月28日、千葉県松戸市の O さんから
YAMAHA T-2
の修理依頼品が到着しました。
FM 専用機
で定価13万円の高級チューナです。
程度&動作チェック
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修理依頼者のコメント
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貴殿のホームページを興味深く拝見して参考にさせていただき LED 化しました。
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ダイヤル指針表示と同調のズレがあったので、バリコン軸に固定されているプーリを緩め、指針ズレを調整しています。
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[電解コンデンサ] [RCA 端子] [F 端子] の交換と調整をお願いします。
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外観
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製造シリアル番号は [02532] で、電源コードの製造マーキングよりは製造年は不明でした。
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筐体の天板部分には薄いサビが出ている状態で、ピカッと光る光沢はありません。
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正面部分は綺麗なので、そう気にならないです。
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これ以外はかなり綺麗な状態で、キズやスレはありません。
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電源 ON してチェック
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電源が入り、周波数表示器と操作ボタンは良好です。
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LED 化されているとのことで、照明ランプ切れはありません。
指針はブルーカラーに変更されています。
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受信できましたが、[SQ メータ] のピークと [T メータ] のセンタが合いません。
調整ズレしています。
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[STEREO] ランプは点灯し、ステレオ感があります。
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到着時の主要性能データを測定しました。
ステレオセパレーションなど劣化 (調整ズレ) しています。
項目 |
IF MODE |
stereo/mono |
L |
R |
単位 |
ステレオセパレーション (1kHz) |
LOCAL |
stereo |
38 |
37 |
dB |
高調波歪率 (1kHz) |
0.40 |
% |
パイロット信号キャリアリーク |
-43 |
-54 |
dB |
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カバーを開けてチェック
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ほぼ密閉構造のため、内部は非常に綺麗です。
目視で劣化がみられる部品は無さそうに思いました。
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使用 IC のロット番号より、本機は [1977年製造品] とわかりました。
リペア
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電解コンデンサ交換 ・・・ 修理依頼者の要求
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交換方針
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電源部の電解コンデンサは常に熱にさらされているので劣化しやすく、この部分は全部交換します。
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MPX 部の電解コンデンサが容量抜けするとステレオ分離性能が悪化するので、この部分は全部交換します。
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T-2 ではオーディオ回路が DC アンプ構成になっていて、そもそもこの部分に電解コンデンサはほとんど使われていません。
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オーディオ回路では唯一最終段 (RCA 端子の手前) にバイポーラ電解コンデンサがあり、これを交換します。
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交換リスト
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電源用の電解コンデンサは信頼性を上げるため 105℃ クラスを使いました。
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MPX、オーディオ部位には高周波特性の優れた積層セラミックまたはオーディオクラスを使いました。
部位 |
部品番号 |
交換前 |
交換後 |
備考 |
MPX |
C250 |
100uF/16V (85℃) |
100uF/35V (105℃) |
|
C253 |
0.22uF/50V (85℃) |
0.22uF/50V (積層セラミック) |
|
C254 |
10uF/16V (85℃) |
10uF/25V (MUSE) (BP) |
|
C257 |
1uF/50V (85℃) |
1uF/50V (MUSE) (BP) |
|
電源 |
C265 |
1000uF/10V (85℃) |
1000uF/16V (105℃) |
|
C266 |
1000uF/10V (85℃) |
1000uF/16V (105℃) |
|
C267 |
100uF/6.3V (85℃) |
470uF/16V (105℃) |
|
C269 |
100uF/16V (85℃) |
100uF/35V (105℃) |
PL1 端子ランプ電源 |
C270 |
470uF/25V (85℃) |
470uF/25V (105℃) |
|
C271 |
100uF/25V (85℃) |
100uF/35V (105℃) |
|
C272 |
470uF/25V (85℃) |
470uF/25V (105℃) |
|
C273 |
470uF/25V (85℃) |
470uF/25V (105℃) |
|
C274 |
100uF/25V (85℃) |
100uF/35V (105℃) |
|
C275 |
47uF/25V (85℃) |
47uF/63V (105℃) |
|
C276 |
470uF/25V (85℃) |
470uF/25V (105℃) |
|
C277 |
470uF/25V (85℃) |
470uF/25V (105℃) |
|
C278 |
47uF/50V (85℃) |
47uF/63V (105℃) |
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C279 |
100uF/35V (85℃) |
100uF/35V (105℃) |
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C280 |
100uF/35V (85℃) |
100uF/35V (105℃) |
|
C281 |
220uF/16V (85℃) |
220uF/35V (105℃) |
|
C282 |
10uF/25V (85℃) |
10uF/50V (105℃) |
|
C283 |
1uF/50V (85℃) |
1uF/50V (MUSE) (BP) |
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C284 |
100uF/16V (85℃) |
100uF/35V (105℃) |
|
C286 |
10uF/16V (85℃) |
10uF/50V (105℃) |
|
C287 |
1uF/50V (85℃) |
1uF/50V (MUSE) (BP) |
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オーディオ |
C427 |
3.3uF/16V (BP) |
3.3uF/50V (MUSE) (BP) |
|
C428 |
3.3uF/16V (BP) |
3.3uF/50V (MUSE) (BP) |
|
C431 |
3.3uF/16V (BP) |
3.3uF/50V (MUSE) (BP) |
|
C432 |
3.3uF/16V (BP) |
3.3uF/50V (MUSE) (BP) |
|
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交換後の記録写真
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電源部です。
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交換したのは赤枠で囲んだ部品です。
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基板の丸いシルクが元の電解コンデンサの大きさです。
かなり小さくなってスカスカになりました。
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小さくなって風通しが良くなったのと、105℃製品使用で、信頼性が上がります。
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左の写真は MPX 部です。
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交換したのは赤枠で囲んだ部品です。
青い部品は積層セラミックコンデンサで、これ以外は電解コンデンサです。
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右の写真は [オーディオアンプ基板] です
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[RCA 端子] と [F 端子] の交換 ・・・ 修理依頼者の要求
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[RCA 端子] と [F 端子] を交換しました。
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左の写真がリニューアルした [RCA 端子] です。
金ピカになりました。
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右の写真がリニューアルした [F 端子] です。
ピカピカになりました。
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[同調] ノブを 76MHz より低い位置に移動していくと、指針がダイヤル機構のネジに当たる
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これはマズイです。
いずれ [指針] か [指針と糸のペイントロック] が外れます。
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本機は修理依頼者のほうで、バリコン機構にあるプーリを緩め指針ズレを調整しており、これが原因です。
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バリコン機構にあるプーリを正常位置に戻し、周波数ズレはフロントエンドの OSC トラッキング調整で直しました。
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交換前に実装されていた部品の記録
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下の写真は交換前に実装されていた部品です。
左から [電解コンデンサ] [RCA 端子] [F 端子] です。
再調整
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電圧チェック (VP)
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[#4] [#5] は [チューナ基板] に実装されたコネクタです。
VP |
標準電圧 |
実測電圧 |
判定 |
備考 |
#4-4pin |
+5V |
+4.80V |
〇 |
|
#5-5pin |
+13V |
+12.8V |
〇 |
|
#5-6pin |
-13V |
-14.2V |
〇 |
|
R205 (470Ω) 右側 |
+13.2V |
+13.2V |
〇 |
[REC CAL] OFF にて測定 |
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FM 受信部の調整
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調整結果
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再調整でステレオセパレーションは到着時より 20dB (10倍) 向上しました。
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高調波歪率は到着時より 1/5 以下になりました。
項目 |
IF MODE |
stereo/mono |
L |
R |
単位 |
ステレオセパレーション (1kHz) |
LOCAL |
stereo |
57 |
57 |
dB |
DX |
29 |
29 |
dB |
高調波歪率 (1kHz) |
LOCAL |
mono |
0.078 |
% |
stereo |
0.078 |
% |
DX |
mono |
0.25 |
% |
stereo |
0.77 |
% |
パイロット信号キャリアリーク |
LOCAL |
stereo |
-51 |
-51 |
dB |
オーディオ出力レベル偏差 |
LOCAL |
mono |
0 |
-0.06 |
dB |
REC CAL |
LOCAL |
mono |
351.6 |
Hz |
-6.6 |
dB |
使ってみました
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修理&再調整が終わって
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ステレオセパレーションや高調波歪率が大きく向上し、音がかなり良くなりました。
解像度が上がった感じです。
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デザイン
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まずはズッシリ重たいことに驚きます。
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全体が厚いアルミ材で出来ており、とっても高級感があります。
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YAMAHA らしい優れたデザインです。
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操作性
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一般的な操作は直感で判ります。
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チューニングノブの動きは高級機らしい重みがあってスムーズです。
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アンテナ端子は F 端子のため、妨害電波の混入を防げます。
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FM 受信
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妨害波排除能力は強力です。
出てくる音は解像度感のあるシッカリした音です。