YMAHA CT-R1 (2号機) が到着
2022年8月20日、広島市の Y さんから YMAHA CT-R1 の移植ドナー品が到着しました。
この写真は照明を LED 化した後です。
CT-R1 (1号機)
の修理依頼者と同じかたで、1号機は修理不可と判定したのですが、[どうしても CT-R1 を復活させてほしい] とのことで、部品取り用の CT-R1 を手配いただいたのです。
程度&動作チェック
-
修理依頼者のコメント
-
入手した状態でそのまま送りましたので、通電、各部チェックはしていません。
-
ドナーとして使用できればいいのですが ・・・
-
外観
-
製造シリアル番号は [02370] です。
-
全体としては外観は悪く、ジャンクレベルです。
-
[フロントパネル] は汚れはありますが、まあまあ綺麗です。
-
チューニングノブに目立つキズがあります。
これ以外のノブやレバーにも少しキズがあります。
-
[リアパネル] は右から1/3くらいの所で大きく歪んで (へこんで) います。
汚れと線キズとサビがあります。
-
[天板] は汚い感じがするくらい状態が悪く、クリーニングでは復活無理です。
再塗装が必要なレベルです。
-
[底板] はまあまあ綺麗で、[脚] は劣化を感じます。
-
電源 ON してチェック
-
電源は問題なく入りました。
指針のランプが切れています。
メータのランプは点灯しています。
-
FM 受信
-
感度は低下していますが、強めの放送電波は受信でき、[STEREO] ランプが点灯しステレオ感もあります。
-
タッチセンサは正常動作します。
大きな周波数ズレはありません。
-
AM 受信
-
感度低下や周波数ズレは感じられないです。
S メータが半分以上振れ、良好に受信できました。
音も良いです。
-
以上より、[外観は1号機] [動作は2号機] が良いです。
-
2号機をベースにして、1号機の良好パーツを移植するのが良さそう (楽そう) です。
-
カバーを開けてチェック
-
使用 IC のロット番号より、本機は [1976年製造] とわかりました。
-
内部は綺麗で、基板も汚れが無く綺麗です。
1号機より状態が良いです。
-
やはり、2号機をベースマシンにするのが良さそうです。
リペア
-
2個1
・・・ 2台の CT-R1 の各パーツを組み合わせて1台の完動品を作ること
-
方針
-
2号機をベースマシンにして1号機の良好部品を移植交換します。
-
2号機の基板を1号機に移植すると、配線外しや糸掛け機構分解など作業量が膨大になります。
-
よって、1号機→2号機 移植とするのが楽です。
-
2号機で良好なのは [フロントエンド] [基板] だけです。
よって、これ以外のパーツは1号機から移植交換しました。
-
リアパネルも1号機のものを移植交換しました。
結果的に製造シリアル番号は1号機になりました。
-
作業が終わって
New 1号機
は良好動作しました。
-
照明 LED 化 ・・・ 修理依頼者よりのリクエスト
-
下の回路図の左は既存の照明回路、右は LED 化した照明回路です。
-
既存回路では既に半波整流してフィラメントランプを駆動していました。
-
なぜ?交流のまま駆動しないのだろうと疑問になりました。
-
これは、おそらく 8V/0.3A のランプをそのまま AC14V で駆動すると過電圧になるためです。
-
半波整流して駆動すると、実質的に 8V くらいになります。
消費電力は 8V×0.3A×3個=7.2W です。
-
LED 化では、この半波整流に電解コンデンサを抱かせて DC21V 電源にしました。
-
LED には [3mm 砲弾型] [白色] [照射角30°] [25000mcd] の超高輝度の高級品を使いました。
-
LED 2組に流れる電流は実測 8mA だったので、消費電力は 21V×8mA=0.17W です。
-
LED 化で明るくなって、オマケに消費電力が 7W も減ってエコになりました。
-
記録写真
-
左の写真は既存のフィラメントランプで左が指針用、右がメータ用です。
-
右の写真は LED 化後です。
すっきりクリア表示になりました。
-
バリコン軸の接触不良回復
-
本機は46年物ビンテージ (2022年現在) です。 バリコン軸の接触回復は必須です。
-
エレクトロニッククリーナ
を軸受けに噴射し何度もバリコン羽を動かすと緑青サビが湧き出てきます。
-
湧き出た緑青サビを爪楊枝で丹念に落とします。
-
[1] と [2] を何度も何度も繰り返します。
-
仕上げに、軸受けに コンタクトグリース を塗布して防錆処置します。
-
作業したのですが、緑青サビはほとんど無かったです。
このことから、2号機のフロントエンドは状態が良いです。
-
その他
-
移植作業でフロントパネルを分解したので、ついでにフロントパネル内を軽く清掃しました。
-
ノブやスイッチに汚れ (手垢) があったので軽く清掃しました。
再調整
-
電圧チェック (VP)
-
基板の左上の右の写真の@〜Bで示したジャンパ線で測定します。
VP |
標準値 |
実測値 |
判定 |
@ |
+13V |
+13.0V |
〇 |
A |
+13V |
+13.1V |
〇 |
B |
-12V |
-12.0V |
〇 |
-
調整結果
-
CT-R1 (1号機)
に記載の手順で調整しました。
-
高調波歪率 (1kHz) は、[MONO : 0.11%] [STEREO : 0.12%] で実用レベルです。
-
ステレオセパレーションは 40dB なので実用レベルです。
項目 |
L |
R |
単位 |
ステレオセパレーション (1kHz) |
40 |
40 |
dB |
パイロット信号キャリアリーク |
-60 |
-57 |
dB |
オーディオ出力レベル偏差 (MONO) |
0 |
+0.33 |
dB |
REC CAL 信号 |
351.6Hz |
Hz |
-6.5 |
-6.5 |
dB |
使ってみました
-
デザイン
-
全体がシルバー調で精密さを感じる YAMAHA 独特のスタイルです。
-
ダイヤルスケールの照明が無く、ダイヤル指針だけ照明されています。
-
フロントパネルはかなり分厚いアルミ材のヘアライン仕上げで良好です。
-
チューニングノブは直径 45mm の無垢アルミ材で高級感あります。
-
ダイヤル指針の動きは、重過ぎず軽過ぎず、ちょうど良いです。
-
受信性能&音質
-
性能は高くはなく、近接局との干渉に弱いようでした。
電波強度が強い放送局を受信するには問題ありません。
-
音質は CT-R1 製造当時のヤマハトーンで、細身の解像度感のある出かたです。