TRIO KT-8300 が到着
2022年7月17日、さいたま市の N さんより
TRIO KT-8300
の修理依頼品が到着しました。
N さんの自家配送でした。
パルスカウント検波
で FM 専用機です。
この写真は照明を LED 化した後です。
程度＆動作チェック
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修理依頼者のコメント
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周波数ズレがあったと思います。
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[電源部の電解コンデンサの交換] [ランプの LED 化] [再調整] などをお願いします。
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外観
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製造シリアル番号は [861493] です。
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全体に汚れが目立ちます。
フロントパネルに汚れが目立つがキズはあまりないです。
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フロントパネルに汚れがあって、特にダイヤル面内側に埃が溜まっています。
スイッチ類にサビが出ています。
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リアパネルの端子に若干サビが出ています。
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天板にスレと汚れはありますが状態はマシです。
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ダイヤルの動きはスムーズです。
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電源 ON してチェック
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ランプ切れはありません。
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FM 受信でき、[STEREO] ランプも点灯します。
周波数ズレは感じません。
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チューニングノブ動作で受信音にガサゴソ雑音が入ります。
バリコン軸の接触不良です。
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カバーを開けてチェック
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IC のロット番号より、本機は1978年製造とわかりました。
リペア
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電解コンデンサ交換 ・・・ 修理依頼者からのリクエスト
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交換の方針
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電源部の電解コンデンサは全数交換する。
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FM オーディオ信号が通過する電解コンデンサは全数交換する。
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プリセットメモリバックアップ用の電気二重層コンデンサは交換する。
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使用する電解コンデンサはオーディオクラス品とする。
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部品交換リスト
| 用途 |
部品番号 |
交換前 |
交換後 |
| 電源 |
C77 |
電解コンデンサ |
47uF/16V |
オーディオ用
電解コンデンサ |
47uF/25V (FG) |
| C92 |
1000uF/25V |
2200uF/50V (KW) |
| C93 |
1000uF/25V |
2200uF/50V (KW) |
| C94 |
100uF/25V |
100uF/25V (FG) |
| C97 |
100uF/10V |
100uF/25V (FG) |
| C98 |
10uF/16V |
10uF/50V (FG) |
| C100 |
1000uF/16V |
1000uF/16V (FG) |
| C101 |
1000uF/16V |
1000uF/16V (FG) |
| オーディオ |
C65 |
電解コンデンサ |
0.22uF/50V |
フィルムコンデンサ |
0.22uF/100V |
| C66 |
0.22uF/50V |
0.22uF/100V |
| C67 |
47uF/16V |
オーディオ用
電解コンデンサ |
47uF/25V (FG) |
| C68 |
47uF/16V |
47uF/25V (FG) |
| C69 |
10uF/16V |
10uF/50V (FG) |
| C70 |
10uF/16V |
10uF/50V (FG) |
| C71 |
3.3uF/50V |
3.3uF/50V (MUSE/ES) (BP) |
| C72 |
3.3uF/50V |
3.3uF/50V (MUSE/ES) (BP) |
| C73 |
10uF/16V |
10uF/50V (FG) |
| C74 |
10uF/16V |
10uF/50V (FG) |
| C75 |
47uF/16V |
47uF/25V (FG) |
| C76 |
33uF/16V |
33uF/25V (FG) |
| MPX |
C50 |
電解コンデンサ |
4.7uF/25V |
オーディオ用
電解コンデンサ |
4.7uF/50V (MUSE/ES) (BP) |
| C56 |
3.3uF/50V |
3.3uF/50V (MUSE/ES) (BP) |
| C59 |
0.47uF/50V |
フィルムコンデンサ |
0.47uF/100V |
| C60 |
3.3uF/50V |
オーディオ用
電解コンデンサ |
3.3uF/50V (MUSE/ES) (BP) |
| C62 |
3.3uF/50V |
3.3uF/50V (MUSE/ES) (BP) |
| C63 |
3.3uF/50V |
3.3uF/50V (MUSE/ES) (BP) |
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交換後の記録写真
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写真の左から順に [オーディオ部] [MPX 部] [電源部] です。
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[金色] [緑色] [黒色に金文字] [四角い黄色] のコンデンサが交換後です。
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照明を LED 化 ・・・ 修理依頼者からのリクエスト
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使用していたフィラメントランプ
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[ダイヤル照明]×2個、[メータ照明]×2個です。
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使用ランプは [8V/300mA]×4個ですから、実にランプだけで 10W 近く電力消費しています。
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[フィラメントランプ]→[LED] で消費電力が減るので発熱が少なくなります。
筐体内の温度が下がるので信頼性も上がります。
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ウェッジ球に似ていますが、長さがやや短いです。
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電極にリード線が取り付けられています。
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LED 化で使う LED 球
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高価！
な自動車用 LED ルームランプを使います。
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直径12mm×全長28mm の T10/T16 ウェッジ LED 球です。
サイズ的に T10 と T16 の中間くらいの太さです。
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超高輝度高拡散 SMD 5個で構成します。
SMD には3個の LED が集積されているので、SMD 5個ということは、LED 数15個に相当します。
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このままでは長過ぎるので、分解して LED ユニットにリード線を直接取り付けることにします。
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駆動電圧が (自動車用の) DC12V (13.8V) ですが、おそらく明る過ぎるので少し電圧を下げて使用します。
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旧フィラメントランプのシリコンラバーホルダはそのまま流用します。
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LED ランプ駆動回路
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LED は DC 駆動する必要があます。
自動車は DC12V ですよね。
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右の回路にて、メイン電源の整流後電圧 (約±20V) から LED ランプを駆動します。
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[C93] [C94] は今回の電解コンデンサ交換で [1000uF]→[2200uF] に交換しているので、余裕です。
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LED ランプを2個直列にするので、LED ランプ1個あたりは DC10V くらいです。
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LED ランプの定格 DC12V より低いですが問題なく点灯します。
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電流は 50mA くらいなので、LED ランプ全体の消費電力は [20V]×[50mA]×2セット＝2W くらいです。
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フィラメントランプの時より 8W も消費電力が減ってエコになりました。
しかも非常に明るいです。
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LED ランプの配線の様子
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左右両端にある2個はダイヤル照明用で、内側にある2個はメータ照明用です。
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電線には高級な耐熱電線を使いました。
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配線がダイヤル指針駆動機構に干渉しないよう、結束バンドで整線しました。
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LED ランプに交換して非常に綺麗な表示になりました！
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黄昏の橙色の野暮ったい表示から、純白色の現代的な表示に生まれ変わりました。
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実物はこの写真よりもはるかにスッキリ・クッキリです。
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この LED 化作業でフロントパネルをバラバラに分解したので、ついでにパネル内部を清掃しました。
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交換した部品の記録写真
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交換前に基板などに実装されていた部品です。
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チューニングノブ動作で受信音にガサゴソ雑音が入る
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原因はバリコン軸の接触不良です。
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本機は44年物ビンテージ (2022年現在) です。
バリコン軸の接触回復は必須です。
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エレクトロニッククリーナ
を軸受けに噴射し何度もバリコン羽を動かすと緑青サビが湧き出てきます。
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湧き出た緑青サビを爪楊枝で丹念に落とします。
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[1] と [2] を何度も何度も繰り返します。
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仕上げに、軸受けに
コンタクトグリース
を塗布して防錆処置します。
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大量の緑青サビが除去できました。
結構手間がかかりましたが、以上で回復しました。
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実際に使ってみて、ガサゴソ雑音が消滅したことを確認しました。
再調整
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電圧チェック (VP)
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以下のように良好です。
| VP |
標準値 |
実測値 |
判定 |
| Q19-E |
+14V |
+14.7V |
〇 |
| D19-A |
-13.5V |
-14.1V |
〇 |
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調整結果
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KT-8300 (1号機)
に記載の調整手順で再調整しました。
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FM トラッキング調整後は以下となりました。
この程度のズレはバリコン精度に依るので、やむを得ないです。
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76MHz：76.08MHz で受信
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83MHz：83.00MHz で受信
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90MHz：89.96MHz で受信
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FM ステレオ時の高調波歪率は 0.01% (WIDE 1kHz) でした。
問題ないです。
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FM ステレオセパレーションなどの数値は以下です。
とても優秀です。
| 項目 |
IF BAND |
L |
R |
単位 |
| ステレオセパレーション (1kHz) |
WIDE |
70 |
70 |
dB |
| NARROW |
59 |
61 |
dB |
| パイロット信号キャリアリーク |
WIDE |
-72 |
-72 |
dB |
| オーディオ出力レベル偏差 (MONO) |
0 |
+0.23 |
dB |
使ってみました
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デザインは良いが、ともかくデカイ
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フロントパネルはかなり分厚いアルミ材のヘアライン仕上げで良好です。
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今回、照明を LED 化したので非常に綺麗な表示です。
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電源を入れるとダイヤルスケールが浮き上がって表示され、美しいです。
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受信性能＆音質
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感度や妨害波排除能力は良いです。
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音は無味無色のパルスカウント検波そのものです。
