Technics ST-9030T (3号機) が到着
2023年2月16日、愛知県江南市の H さんから
Technics ST-9030T
の修理依頼品が到着しました。
写真は照明 LED 化後です。
野暮ったい電球色から、現代的なクリーム色とホワイト色に変わりました。
完全 LED 化ですから、今後、ランプ切れはまずないと思います。
高級 FM 専用機
です。
程度&動作チェック
-
修理依頼者のコメント
-
ヤフオクで落札したジャンク品の酷いチューナです。
ヤフオクの画像では確認できませんでした。
-
傷が非常に多く、汚れがあります。
自分で3日間かかって可能な限り汚れを取りました。
電源はOKです。
-
外観
-
製造シリアルシールの文字が不鮮明で確実ではないですが、[AD8420F048] と読み取れました。
-
電源コードの製造マーキングより [1978年製造] とわかりました。
-
修理依頼者より醜い外観と聞いていたのですが、それほど問題なく実用範囲です。
-
修理依頼者が3日間かけてクリーニングした成果でしょう。
-
フロントパネルは正面からパッと見は綺麗に見えます。
-
[リアパネル] [天板] [底板] [側板] は汚れはありますが、そう問題ないです。
RCA 端子に輝きがあります。
-
ダイヤルスケール内側にポツポツとしたカビが少しあります。
-
[mpx hi-blemd] [servo tuning] [IF select] スイッチの動きが、これまで触った ST-9030T より重いです。
-
電源 ON してチェック
-
電源は正常に ON しました。
照明のランプ切れはないです。
-
[S メータ] [T メータ] の動きはほぼ正常で、良音が出ました。
-
[stereo] ランプが点灯せず、実際にステレオになっていないようです。
-
カバーを開けてチェック
リペア
-
[stereo] ランプが点灯せず、ステレオにもなっていない
-
MPX の VCO 調整ズレが原因でした。
[VR602] を再調整して直りました。
-
バリコン軸の接触回復
-
本機は45年物ビンテージ (2023年現在) です。
バリコン軸の接触回復は必須です。
-
エレクトロニッククリーナ
を軸受けに噴射し何度もバリコン羽を動かすと緑青サビが湧き出てきます。
-
湧き出た緑青サビを爪楊枝で丹念に落とします。
-
[1]〜[2] を何度も何度も繰り返します。
-
仕上げに、軸受けに
CRC 5-56
を塗布して防錆処置します。
-
8連バリコンなので、結構手間がかかりましたが、以上で回復しました。
-
フィラメントランプ → LED 化
-
フィラメントランプは寿命が短いです。
そこで長寿命の LED にします。
使った LED は以下です。
-
左の FUSE 型 LED はダイヤルとメータの照明に使います。
全部で5個使います。
-
1個で [6000K 白色 LED]×9個分搭載しています。
-
右砲弾型 LED は [wide] [stereo] 表示に使います。
全部で2個使います。
3mm 白色、1560mcd、照射角 70°です。
-
[フィラメントランプ]→[LED] への回路
-
[ダイヤル+メータ] のランプは AC 駆動でしたが、LED は DC 駆動する必要があります。
-
ST-9030T に既にある -20V 電源を使って LED を駆動します。
負電源を使うのは電流に余裕があるからです。
-
この回路では LED×5本に 47mA 流れるので、LED 1個あたり 9.4mA です。
-
電流制限抵抗270Ωは、元 stereo ランプ回路に使われていた R618 を流用しました。
-
[wide] のランプは DC 駆動なので、R327 の電流制限抵抗を変更して LED と置き換えました。
-
[stereo] のランプは DC 駆動なので、R618 の電流制限抵抗を変更して LED と置き換えました。
-
これだけだと、[stereo] ランプ駆動回路の漏れ電流でステレオでない時も薄っすらと点灯してしまいます。
-
LED は VF 電圧を超えると微弱な電流でも光ってしまうのです。
ある意味、フィラメントランプより感度が高い。
-
対策として 1kΩ の電圧制限抵抗を入れました。
漏れ電流があっても VF 電圧以下にする。
-
LED 化により消費電力が大きく減ってエコになりました。
-
フィラメントランプの時は 6.3V×250mA×5個+6.3V×40mA×2個=8.4W 消費していました。
-
LED 化後の照明での消費電力は 1W 以下になりました。
-
すなわち、8.4W→1W となり、明るくなったのに 7.4W もエコになったのです。
-
ダイヤルスケール内側にポツポツとしたカビがある
-
フロントパネルを取り外して、OA クリーナとアルコールでカビを除去して、スッキリ綺麗になりました。
-
[mpx hi-blemd] [servo tuning] [IF select] スイッチの動きが重い
-
スイッチのレバー部分に潤滑油
CRC 5-56
を塗布して、本来の動きになりました。
再調整
-
電源電圧チェック (VP)
-
実測値は以下のように良好です。
VP |
標準電圧 |
実測電圧 |
判定 |
TR801-E |
+12.7V |
+12.5V |
〇 |
TR802-E |
+12.7V |
+12.5V |
〇 |
TR803-E |
-12.7V |
-12.2V |
〇 |
-
調整結果
-
ST-9030T (1号機)
に記載の手順で調整しました。
-
フロントエンドの再調整にて感度がかなり上がりました。
やはり、調整し直すと音質が向上して良い音になりました。
-
ステレオセパレーションなどは以下となりました。
良好な数値です。
項目 |
IF select |
stereo/mono |
L |
R |
単位 |
ステレオセパレーション (1kHz) |
wide |
stereo |
50 |
49 |
dB |
narrow |
42 |
42 |
dB |
高調波歪率 (1kHz) |
wide |
mono |
0.04 |
% |
stereo |
0.04 |
% |
narrow |
mono |
0.13 |
% |
stereo |
0.13 |
% |
パイロット信号キャリアリーク |
wide |
stereo |
-90 |
-90 |
dB |
オーディオ出力レベル偏差 |
wide |
mono |
0 |
-0.44 |
dB |
使ってみました
-
デザイン
-
鉄の塊のようなチューナで、ズッシリ重いです。
そして頑丈な作りです。
-
照明を LED 化したので、ダイヤル面は見やすいクリーム色になり、素敵です。
-
設計者が本来目指したであろう色調になったと思います。
-
ダイヤルとのズレも少なく、高精度のバリコンを使っています。
-
チューニングノブは重量感と質感があり、操作性も良好です。
-
FM アンテナ入力は F 端子なので、雑音電波が混入しないです。
-
[OUTPUT LEVEL] ツマミで出力レベルを可変できます。
-
高感度で高音質
-
豪華な作りで妨害排除能力が高く、S/N が非常に良く、結果的に高感度になっています。
スペック以上の受信能力があります。
-
音のエネルギーが低域から高域までスッキリ伸びており、かなりの高音質です。