SONY ST-SA5ES (4号機) がやってきた!
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2013年5月12日、沖縄の T さんに
SONY ST-SA5ES
の故障品を借用しました。
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到着時のまま、状況チェック
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FM 受信で S メータが全く振れない。
MUTING OFF でも全く受信できない。
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AM 受信は全て正常。
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IC のロット番号は1996年製を示し、電源ケーブルの製造マーキングは1997年でした。
このことより、おそらく、本機は1997年初頭に製造されたと思います。
修理
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状況からは電源関係の不具合と見立てました
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電源電圧を測定してみました。
全て正常です。
ジャンパー |
表示電圧 |
標準電圧 |
実測電圧 |
判定 |
備考 (用途) |
JW88 |
+30V |
+30.9V |
+30.8V |
正常 |
PLL (同調) |
JW89 |
+15V |
+16.3V |
+14.9V |
正常 |
AUDIO SYSTEM |
JW145 |
-17V |
-17.5V |
-17.8V |
正常 |
FL 管 |
JW213 |
+13V |
+13.6V |
+13.1V |
正常 |
DIGITAL SYSTEM |
JW220 |
+5V |
+5.6V |
+5.6V |
正常 |
DIGITAL SYSTEM |
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VT 電圧は FM 受信周波数と共に正常に変化します。
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こうなると、FM フロントエンドや IF 各段のいずれかの電源ダウンが推定されます。
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それぞれに電圧が加圧されているかは、その段の IC や FET に手を触れてみれば大体判ります。
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素子が熱を持っていれば加圧されている。
冷たいと加圧されていない可能性がある。
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ゴッドハンド
で各所を触れた結果、FM フロントエンドの RF 段の FET が冷たい。
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更に調査して、FM フロントエンドの RF 段に電源を供給する L108 (100uH) の断線と判明しました。
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L108 の代替の手持ちがなかったので、10Ω抵抗器に交換しました。
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回路的には問題ないと思います。
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これで S メータがフルまで振れるようになり、正常にステレオ受信できるようになりました。
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予防交換
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基板全体を見回すと [CT101] [CT102] [CT103] の RF トリマ (8.2PF)、[C605] の電気二重層コンデンサ (0.1F 5.5V) でサビが出ています。
これからずっと安定的に使うなら交換すべきと思われました。
右の写真が今回交換した(元付いていた)部品です。
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[CT101] [CT102] [CT103] トリマコンデンサを
村田製作所
の
TZ03Z100F169
という 10PF タイプ(青色)と全数交換しました。
このトリマコンデンサというのが結構曲者で、悪くなってもなかなか気が付かない、感度がフラフラするという現象が出ます。
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[C605] を 0.22F 5.5V のものと交換しました。
理論上はオリジナルよりプリセットメモリが倍以上バックアップされるはず。
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全体に再調整
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ST-SA5ES (1号機)
に記載の調整手順にて再調整しました。
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感度や音質が上がり ST-SA5ES 本来の艶っぽい音が蘇りました。
何度聴いても ST-SA5ES の音は一流です。
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再調整結果は以下です。
素晴らしく良好な数値です。
項目 |
IF BAND |
L |
R |
単位 |
ステレオセパレーション |
WIDE |
65 |
76 |
dB |
ステレオセパレーション |
NARROW |
41 |
40 |
dB |
パイロット信号キャリアリーク |
- |
-71 |
-75 |
dB |
オーディオ出力レベル偏差 (MONO) |
- |
0 |
0 |
dB |
CAL TONE 信号 |
- |
433.6Hz
-6.3 |
433.6Hz
-6.4 |
dB |
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ST-S333ESG, ST-S333ESA, ST-S333ESJ, ST-SA5ES と FM 受信部の回路は全く同じです。
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しかし、一番音が良いのは ST-SA5ES です。
おそらく、使っている電解コンデンサのグレードが良いのでしょう。
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ST-SA5ES に続く音の良い機種は ST-S333ESG と思います。