SONY ST-SA5ES (5号機) が到着!
2022年9月18日、岩手県北上市の H さんより
SONY ST-SA5ES
の修理依頼品が到着しました。
程度&動作チェック
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修理依頼者からのコメント
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3年ほど前、調整済みの中古チュナーを購入し使用していましたが、最近異常となり使えなくなりました。
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メーター上受信レベルは問題ないが STEREO インジケーターが点滅し音もノイズが乗って聞くことができません。
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以前は温まると直っていましたが今は完全にダメになりました。
修理をお願いします。
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外観
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シリアル番号は [200159] でした。
電源コードの製造マーキングより、1994年製造品とわかりました。
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純正 AM ループアンテナの添付はありませんでした。
よって、AM は完全な調整はできません。
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フロントパネルの左上角に大きな当てキズがあって、パネルが少し変形しています。
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たぶん、落下してこの部分が当たったのでしょう。
これ以外は非常に綺麗なので残念です。
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リアパネルは非常に綺麗です。
端子類も綺麗です。
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天板と底板は非常に綺麗です。
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電源 ON してチェック
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電源は正常に入り、FL 表示器の輝度は新品同様です。
ボタン操作に問題はなく良好です。
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FM 受信
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S メータはそれなりに振れますが、音が全く出ません。
[STEREO] 表示も点灯しません。
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MUTING OFF にしても音が出ません。
[CAL TONE] ボタンでテスト音は出ます。
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AUTO TUNING すると、あちこちでストップします。
何かおかしいです。
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AM 受信
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感度が落ちていますが、ちゃんと受信して音も出ます。
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カバーを開けてチェック
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内部の基板は非常に綺麗です。
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[FM トリマコンデンサ]×3個 [PLL 検波トリマコンデンサ] [電気二重層コンデンサ] は既に誰かが交換していました。
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電気二重層コンデンサ [C605] には [NEC 0.22F/5.5V] が実装されています。
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おそらく、3年前に中古販売業者が交換したと思われ、ここはこのままとします。
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電解コンデンサの膨張や液漏れは見られません。
まだ大丈夫と思います。
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FM 同調点調整の [IFT251] のコアを回してみましたが、S カーブが出ず、AFC 電圧は常に 200mV のままで変わりません。
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これが原因臭いですが、何が悪いかは基板を外して裏面を見ないとわかりません。
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AUTO TUNING であちこちでストップするのは、この中途半端な AFC 電圧のせいです。
リペア
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[IFT205] のコアを回しても S カーブが出ない
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故障要因は [IFT251] か IC251 [LA1235] です。
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[IFT251] の裏側を見ると、誰かが既に [IFT251] の内蔵チタコンを外し、代わりに外部にセラミックコンデンサの 100PF を取り付けてありました。
[IFT251] のチタコン容量抜け対策としては正しいです。
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こうなると [LA1235] が一番怪しいです。
[IFT251] のコアを回しても AFC 電圧が変わらないことから、ますます怪しいです。
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[LA1235] の部分を IC ソケット化してから新しい [LA1235] と交換しました。
直りました!
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S カーブが出ると一緒に [音が出ない] 現象も直りました。
写真のように IC ソケットには丸ピンタイプの高級品を使いました。
[LA1235] の手前にある青い IFT は [IFT251] です。
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誰かが取り付けた [セラミックコンデンサ 100PF] の温度係数が不明です。
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念のため、
温度係数 30ppm/℃
の [温度補償型積層セラミックコンデンサ 100PF] と交換しました。
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左の写真はコンデンサ交換前で、右の写真は交換後です。
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FUSE 抵抗のチェック
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許容範囲を±20%として、判定が×の抵抗を交換します。
[R279] を交換しました。
写真で黄色〇で囲んだ抵抗が交換後です。
セクション |
部品番号 |
標準値 (Ω) |
実測値 (Ω) |
判定 |
対策 |
FM FRONT END |
R119 |
100 |
100 |
〇 |
|
WOIS |
R203 |
10 |
9.8 |
〇 |
|
R207 |
10 |
9.9 |
〇 |
|
R211 |
10 |
10.4 |
〇 |
|
R227 |
10 |
10.4 |
〇 |
|
IF |
R259 |
100 |
99.8 |
〇 |
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DET |
R274 |
10 |
10.1 |
〇 |
|
R279 |
220 |
155 |
× |
220Ωに交換 |
R292 |
100 |
100 |
〇 |
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MPX |
R301 |
10 |
10.0 |
〇 |
|
R327 |
47 |
47.1 |
〇 |
|
AM |
R403 |
220 |
219 |
〇 |
|
R410 |
150 |
149 |
〇 |
|
PLL |
R511 |
220 |
218 |
〇 |
|
R516 |
180 |
179 |
〇 |
|
CONTROL |
R626 |
47 |
47.4 |
〇 |
|
POWER SUPPLY |
R910 |
22 |
22.6 |
〇 |
|
R921 |
220 |
217 |
〇 |
|
R931 |
270 |
269 |
〇 |
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交換前に基板に実装されていた部品の記録
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左から順に [LA1235] [セラミックコンデンサ] [R279] です。
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ハンダクラック対策
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ST-S333ES シリーズでは銅製のアースバーが敷かれています。
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これはこれで素晴らしいのですが、経年変化でアースバーでハンダクラックが発生しやすいのです。
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アースバーに補修ハンダを行いました。
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リアパネルの端子類
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どうしても端子のリードと基板の間で機械的なタワミを原因とするハンダクラックが発生しやすいのです。
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端子のリードと基板のハンダ付け部分に補修ハンダを行いました。
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フロントパネルの左上角に大きな当てキズがある
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やや目立つキズなので、自動車用の [タッチアップペン・黒つや消し] で軽く部分塗装しました。
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パッと見はキズは判らなくなり、タッチアップして正解です。
再調整
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電圧チェック (VP)
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ジャンパで測定します。
電圧の実測値は以下のように正常でした。
VP |
表示電圧 |
実測電圧 |
判定 |
備考 |
JW88 |
+30V |
+31.1V |
〇 |
PLL |
JW89 |
+15V |
+14.9V |
〇 |
AUDIO |
JW145 |
-17V |
-17.7V |
〇 |
FL |
JW213 |
+13V |
+13.1V |
〇 |
DIGITAL |
JW220 |
+5V |
+5.61V |
〇 |
DIGITAL |
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ST-SA5ES (1号機)
に記載の手順で再調整しました
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調整してみてわかりましたが、3年前の修理業者もちゃんとした調整をやっていたようです。
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ステレオ時の高調波歪率は 0.04% (WIDE 1kHz) で良好です。
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ステレオセパレーションなどは以下のように良好です。
項目 |
IF BAND |
L |
R |
単位 |
ステレオセパレーション (1kHz) |
WIDE |
60 |
70 |
dB |
NARROW |
36 |
35 |
dB |
パイロット信号キャリアリーク |
WIDE |
-68 |
-68 |
dB |
オーディオ出力レベル偏差 (MONO) |
0 |
+0.24 |
dB |
CAL TONE |
398.4 |
Hz |
-5.5 |
-5.5 |
dB |
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AM は手持ちのループアンテナで最高性能になるよう調整しました。
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調整に使ったループアンテナは右の写真のものです。
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感度が大きくアップしました。
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越谷ではニッポン放送 (1242kHz) が AM ステレオで受信できました。
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修理依頼者が使っているループアンテナとは違うと思うので、修理依頼者宅では最高感度にならないと思います。
使ってみました
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デザイン
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素晴らしい精悍なデザインで高級感あります。
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サイドウッドの代わりにアルミ製のサイドパネルがあって、これがイイです。
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(C リングパネルがないので) 直接的で軽快なボタン操作ができます。
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感度と音質
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FM の感度は抜群に良く、S/N が良いです。
細かい音がよく聴けます。
艶っぽい音がします。
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AM の感度も抜群に良く、S/N も良いです。
AM としては音質も良く、放送を楽しめます。