SONY ST-S333ESXU (6号機) が到着!
2023年5月25日、神奈川県横須賀市の M さんより
SONY ST-S333ESXU
の修理依頼品が到着しました。
程度&動作チェック
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修理依頼者からのコメント
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SONY ST-S333ESXUを中古で購入、十数年不具合もなく使用してきました。
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最近チューナが温まってくると時折「プツ」と小さな音切れ?がするようになりました。
(数日に一回程度)
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上下パネルを外して基盤をチェックしてみますと、アースバーに10ヶ所近くハンダクラックがあったので補修しました。
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再度組み立ててチェックしたところ [STEREO] 表示が点かなくなりました。
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81.9MHzの 受信インジケータはフル表示ですが、ステレオ感はありません。
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ミューティングを使用して FM 受信している時、カチカチという音と共に受信が断続することがあります。
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どうやら素人の弄り壊しになってしまったようです。
このような状況なのですが、修理をお願いします。
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外観
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製造シリアル番号は [209616] で、電源コードの製造マーキングより [1988年製造品] とわかりました。
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[純正 AM ループアンテナ] は添付されていませんでした。
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サイドウッドはないです。
全体的に汚れが多いですが、致命的なキズやワレはありません。
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フロントパネルの右下端にやや大きな当てキズがあります。
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リアパネルの RCA 端子に輝きがあります。
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電源 ON してチェック
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電源は正常に入り、FL 表示器の輝度は新品同様です。
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ボタン操作で効きにくいものが多いです。
何回も押したり強く押したりすると、なんとか動作します。
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タクトスイッチ×21個を全数交換したほうがよいです。
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FM 受信
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受信できるのですが [STEREO] 表示が出ません。
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AM 受信
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カバーを開けてチェック
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基板は綺麗です。
電解コンデンサの膨張や液漏れは見られません。
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FM トリマコンデンサ [CT101] [CT102] [CT103] と、PLL 検波トリマコンデンサ [CT201] の調整ネジ部分が真っ黒です。
リペア
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[STEREO] 表示が出ない
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原因は FM 同調点ズレです。
[IFT205] を仮調整して一応直りました。
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[ミューティング使用して FM 受信時カチカチという音と共に受信が断続する] 現象も同時に直りました。
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でも、まだ何だかおかしいのです。
MPX IC の [CXA1064] の背中を押すと [STEREO] 表示が点いたり消えたりします。
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基板の裏側で MPX 部分を見たら、ハンダ屑が基板にこびりついているのを3箇所確認できました。
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ハンダ屑を取り除いたら、この動作不具合が直りました。
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本機は修理依頼者がアースバーの補修ハンダをしており、この時出たハンダ屑の除去をしなかったのが原因でしょう。
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ハンダ屑で不安定に基板のパターンをレアショートさせていたのです。
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アースバーの補修ハンダ部分をやり直し
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前項の不具合事象があったので、修理依頼者がやった補修ハンダ付け部分が危ないと思ったのです。
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ハンダ盛り過ぎで短絡しかかっている部分があったので、アースバーのハンダを一旦吸い取り、全てやり直しました。
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同時にハンダ屑もチェックしたら、更に3箇所でハンダ屑がこびりついていました。
これらも除去しました。
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以上で安心して使えるようになりました。
完全に直りました。
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トリマコンデンサ [CT101] [CT102] [CT103] [CT201] が劣化している
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[CT101] [CT102] [CT103] は 10pF、[CT201] は 30pF のトリマコンデンサと交換しました。
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右の写真は新しく実装した 10pF トリマコンデンサです。
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30pF トリマコンデンサも同じ形状で、ケースが緑色です。
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取付はホット側を同調に、コールド側を GND にします。
写真の手前がコールド側です。
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電気二重層コンデンサの予防交換
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[C605] に [39mF/5.5V] が実装されていましたが、右の写真の [1F/5.5V] に交換しました。
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容量が大幅アップしたのに、大きさは逆にかなり小さくなりました。
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[39mF] → [1F] と26倍の容量になったので、プリセットメモリを数ヶ月保持できるかも。
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[タンタルコンデンサ]→[積層セラミックコンデンサ] に交換
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タンタルコンデンサはある日突然、短絡故障します。
他のコンデンサにするのが吉です。
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ST-S333ESXUでは MCU の電源ラインに [C604] 10uF/6.3V が実装されています。
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これを高価な積層セラミックコンデンサ 10uF/25V と交換しました。
タンタルコンデンサよりはるかに ESR が低く無極性です。
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これで安心して使えます。
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ボタン操作で効きにくいものが多い
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原因はタクトスイッチの劣化です。
ON 時の接触抵抗が大きくなっているのです。
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タクトスイッチは全部で21個使っていますが、全数一斉交換しました。
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交換後は一発でスイッチが反応して、操作が快適になりました。
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新しい部品実装の記録
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左の写真は [CT101] [CT102] [CT103] トリマコンデンサの実装状態です。
赤〇で囲んだ部品です。
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右の写真は [CT201] トリマコンデンサの実装状態です。
赤〇で囲んだ部品です。
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左の写真の赤〇で囲んだ部品が [電気二重層コンデンサ] です。
元のものとリードのピッチが合わないので、電線で接続しました。
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左の写真の緑〇で囲んだ部品が高価な [積層セラミックコンデンサ] です。
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右の写真は、これまで基板に実装されていた部品です。
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金色の部品が [電気二重層コンデンサ] で、その下の小さ青いな部品が [タンタルコンデンサ] です。
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[電気二重層コンデンサ] の右側にある青色と白色の部品が [トリマコンデンサ] です。
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黒色の部品は [タクトスイッチ] です。
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フロントパネルの右下端にやや大きな当てキズがある
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キズは直せませんが、自動車用の艶消し黒タッチペンで塗装して目立たなくなりました。
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[同調] ノブにも2箇所小さなハゲがあったので、同じように塗装しました。
再調整
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電圧チェック (VP)
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電圧の実測値は以下のように正常でした。
VP |
標準値 |
実測値 |
備考 |
JP4 |
+16V |
+15.2V |
チューナ用 |
JP5 |
+13V |
+13.1V |
FL 管用 |
JP6 |
+5.6V |
+5.70V |
デジタル用 (MCU) |
JP7 |
+30V |
+31.6V |
VT 電圧用 |
R909(R) |
-10V |
-9.92V |
コントロール用 |
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FM/AM 受信部の調整
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調整結果
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ステレオセパレーションなどは以下のように素晴らしい数値になりました。
一級クラスの性能です。
項目 |
IF BAND |
stereo/mono |
L |
R |
単位 |
ステレオセパレーション (1kHz) |
WIDE |
stereo |
59 |
60 |
dB |
NARROW |
38 |
38 |
dB |
高調波歪率 (1kHz) |
WIDE |
mono |
0.023 |
% |
stereo |
0.024 |
% |
NARROW |
mono |
0.24 |
% |
stereo |
0.24 |
% |
パイロット信号キャリアリーク |
WIDE |
stereo |
-69 |
-74 |
dB |
オーディオ出力レベル偏差 |
WIDE |
mono |
0 |
0 |
dB |
CAL TONE |
WIDE |
mono |
304.7 |
Hz |
-6.5 |
dB |
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AM は純正ループアンテナの添付が無かったので、IF 調整だけにしました。
使ってみました
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デザイン
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精悍なデザインで使いやすいです。
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後継機の
ST-S333ESG
よりシンプルなデザインですが、むしろこちらのほうが使いやすいです。
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(C リングパネルがないので) 直接的な快適ボタン操作ができます。
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感度と音質
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FM の感度は抜群に良く、S/N が良いです。
細かい音がよく聴けます。
FM 放送らしい柔らかめの音質です。
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AM の感度も抜群に良く、S/N も良いです。
AM としては音質も良く、放送を楽しめます。