SONY ST-S333ESXU (5号機) が到着!
2023年4月27日、岩手県一関市の S さんより
SONY ST-S333ESXU
の修理依頼品が到着しました。
程度&動作チェック
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修理依頼者からのコメント
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ヤフオクで5年前に入手しました。
当初より信号出力確認できずお蔵入りしていました。
調整修理リペアお願いします。
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外観
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製造シリアル番号は [207406] で、電源コードの製造マーキングより [1988年製造品] とわかりました。
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[純正 AM ループアンテナ] は添付されていませんでした。
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どこにもキズやスレがない、新品同様の超綺麗な逸品です。
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電源 ON してチェック
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電源は正常に入り、FL 表示器の輝度は新品同様です。
ボタン操作に問題はなく良好です。
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FM 受信
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電源 ON した直後は S メータは振れるものの全く受信できませんでした。
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電源 ON のまま放置したら、10分くらい経って受信できるようになりましたが不安定です。
[STEREO] 表示も出ません。
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AM 受信
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カバーを開けてチェック
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ゴミが薄っすらと基板に堆積しています。
電解コンデンサの膨張や液漏れは見られません。
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FM トリマコンデンサ [CT101] [CT102] [CT103] と、PLL トリマコンデンサ [CT201] の調整ネジ部分が真っ黒です。
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放熱器やアースバー辺りを触ってみると音が出たり出なかったりします。
まずはこれを直さないと状態把握できません。
リペア
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放熱器やアースバー辺りを触ると音が出たり出なかったりする
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原因はアースバーのハンダクラックです。
ST-S333ES シリーズの持病みたいなものです。
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全部で6本あるアースバー全てを補修ハンダ付けして直りました。
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これで安定して受信できるようになりましたが、まだ以下の不具合があります。
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[SST] ランプがチラチラと点滅しています。
正常受信では点灯が正しいです。
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[STEREO] 表示が出ず、実際の音もモノラルです。
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オートチューニングしても放送局を見つけられず、周波数スキャンを永遠にやっています。
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[SST] ランプがチラチラと点滅している
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原因は FM 同調点ズレです。
IFT205 を仮調整して直りました。
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[SST] ランプが点灯に変わりました。
[STEREO にならない] [オートチューニングできない] 故障も同時に直りました。
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トリマコンデンサ [CT101] [CT102] [CT103] [CT201] が劣化している
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無条件に全数交換しました。
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[CT101] [CT102] [CT103] は 10pF、[CT201] は 30pF のトリマコンデンサと交換しました。
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右の写真は新しく実装した 10pF トリマコンデンサです。
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30pF トリマコンデンサも同じ形状で、ケースが緑色です。
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取付はホット側を同調に、コールド側を GND にします。
写真の手前がコールド側です。
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電気二重層コンデンサの予防交換
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元は [C605] に [39mF/5.5V] の電気二重層コンデンサが実装されていました。
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これを右の写真の [1F/5.5V] に交換しました。
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容量が大幅アップしたのに、大きさは逆にかなり小さくなりました。
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[39mF] → [1F] と26倍の容量になったので、プリセットメモリを数ヶ月保持できるかも。
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新しい部品実装の記録
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左の写真は [CT101] [CT102] [CT103] トリマコンデンサの実装状態です。
赤〇で囲んだ部品です。
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右の写真は [CT201] トリマコンデンサの実装状態です。
赤〇で囲んだ部品です。
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左の写真は [電気二重層コンデンサ] の実装状態です。
元のものとリードのピッチが合わないので、電線で接続しました。
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右の写真は、これまで基板に実装されていた [電気二重層コンデンサ] [トリマコンデンサ] です。
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ゴミが薄っすらと基板に堆積している
再調整
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電圧チェック (VP)
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電圧の実測値は以下のように正常でした。
VP |
標準値 |
実測値 |
備考 |
JP4 |
+16V |
+15.5V |
チューナ用 |
JP5 |
+13V |
+13.2V |
FL 管用 |
JP6 |
+5.6V |
+5.64V |
デジタル用 (MCU) |
JP7 |
+30V |
+31.6V |
VT 電圧用 |
R909(R) |
-10V |
-9.97V |
コントロール用 |
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FM/AM 受信部の調整
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調整結果
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ステレオセパレーションなどは以下のように素晴らしい数値になりました。
一級クラスの性能です。
項目 |
IF BAND |
stereo/mono |
L |
R |
単位 |
ステレオセパレーション (1kHz) |
WIDE |
stereo |
61 |
63 |
dB |
NARROW |
32 |
33 |
dB |
高調波歪率 (1kHz) |
WIDE |
mono |
0.011 |
% |
stereo |
0.023 |
% |
NARROW |
mono |
0.31 |
% |
stereo |
0.31 |
% |
パイロット信号キャリアリーク |
WIDE |
stereo |
-71 |
-74 |
dB |
オーディオ出力レベル偏差 |
WIDE |
mono |
0 |
+0.01 |
dB |
CAL TONE |
WIDE |
mono |
304.7 |
Hz |
-6.7 |
dB |
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AM は純正ループアンテナの添付が無かったので、IF 調整だけにしました。
使ってみました
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デザイン
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サイドウッド付きでとっても高級感あります。
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後継機の
ST-S333ESG
よりシンプルなデザインですが、むしろこちらのほうが使いやすいです。
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(C リングパネルがないので) 直接的な快適ボタン操作ができます。
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感度と音質
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FM の感度は抜群に良く、S/N が良いです。
細かい音がよく聴けます。
FM 放送らしい柔らかめの音質です。
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AM の感度も抜群に良く、S/N も良いです。
AM としては音質も良く、放送を楽しめます。