KENWOOD KT-1010F(4号機)をゲット!
2022年6月8日、川崎市の S さんより
KENWOOD KT-1010F
の故障品を寄贈いただきました。
S さんの自家配送です。
故障品をもらって喜ぶのは筆者くらいかも。
程度&動作チェック
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寄贈者のコメント
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電源 ON すると表示が [1888] となり、全く操作できません。
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外観
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製造シリアル番号は [59K10703] で、電源コードの製造マーキングより [1985年製] とわかりました。
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全体に汚れがありますが、致命的なキズやヘコミはなく、並みの中古レベルです。
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本体を持って揺すると
カラン・コロン
という音がします。
ゲゲゲの鬼太郎さんが住んでいます。
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フロントパネルにほぼキズはなく、綺麗です。
ディスプレイ内が少し汚れて曇っています。
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リアパネルは問題ないです。
端子類に輝きが残っています。
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天板には上に載せられていた機器の足形やスレがありますが、キズやヘコミはありません。
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底板に薄いサビはありますが問題ないです。
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底板にケンウッドサービスのメンテナンスシールが貼ってあり、1995年9月7日に修理されているようです。
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電源 ON して動作チェック
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電源は問題なく入りました。
FL 管の輝度は十分明るいです。
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周波数が [1888] と表示され、操作が全くできません。
これ以上チェックしようがないです。
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カバーを開けてチェック
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内部は問題なく綺麗ですが、なんだか焦げ臭い匂いがします。
なんだろう???
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[フロントパネル基板]〜[チューナ基板] を接続するケーブルの全てで表面がネチャネチャしています。
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カラン・コロンの正体は [GPS OTOJY] という得体の知れない物体でした。
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調べてみると
SUISAKU GPS OTOJY
というものでした。
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大きさは 25(W)×15(H)×5(D)mm と小さいです。
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[ナビゲーションシステム専用 Hyper アンテナ] らしく、これを GPS ナビのアンテナに付ける (貼る) と動作が安定するらしい。
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世界12ヶ国で特許が取られており、しかも
6千円以上
もする代物です。
効能は以下の説明画像を参照ください。
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どうやら、効能を期待して KT-1010F に適用したらしい。
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ほとんどオカルトの世界だなと思いつつ、ハンディ GPS ナビに貼って効果を確かめる筆者がいました。
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これで感度が上がるのなら、高周波設計者要らずだが ・・・ ブツブツ
リペア
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揺するとカラン・コロンと音がする
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オカルト魔除け [GPS OTOJY] を除去しました。
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電源 ON で [1888] を表示し、全く操作できない
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原因はコントローラ電源兼プリセットメモリバックアップ用電解コンデンサ [C243 2200uF/6.3V] の内部短絡でした。
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KT-1010F でこの故障は多いです。
これだけ多いと KENWOOD が採用した電解コンデンサのロット不良と考えます。
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新品の [2200uF/6.3V] 電解コンデンサと交換して、操作できるようになりました。
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操作できるようになったので、この状態で再度チェックしました。
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各ボタン、スイッチなどの動作はほぼ問題ありませんが、以下の不具合あります。
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プリセットの [CH7] [CH8] ボタンのどちらかを押すと [CH7] [CH8] ランプが同時に点灯します。
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[RF SELECTOR] [FM IF BAND] ボタンのどちらかを押すと両方の機能が同時に変化することがあります。
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FM は大きく感度低下していますが、受信はしているようです。
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SSG から強力電波を入力すると S メータが振れ [STEREO] 表示が出ますが、音が出ません。
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AM は問題なく受信はしているようですが、音が出ません。
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[REC CAL] ボタンを押してもテストトーンが出ません。
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音が出ない
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原因は電源系統のバイパス用に実装された電解コンデンサ [C91 100uF/16V] [C97 330uF/6.3V] の内部短絡でした。
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[C91] の内部短絡が影響して [R91 100Ω] も黒焦げになっていました。
焦げ臭い匂いがした原因です。
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[C91 100uF/25V] [C97 220uF/16V] [R91 100Ω] と交換して直りました。
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[FM] [AM] [CAL TONE] で音が出るようになりました。
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右の写真は、ここまでに交換した部品です。
基板に実装されていた部品です。
一番右の部品は黒焦げになった抵抗100Ωです。
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結局、電解コンデンサは3個も内部短絡故障していました。
これだけ多いと全数交換したほうがよいレベルです。
しばらく様子をみます。
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[CH7] [CH8] ランプが同時に点灯する
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原因は [フロントパネル基板]〜[チューナ基板] を接続する [CN3] コネクタへのケーブル差し込み誤りです。
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[CH7] [CH8] の線が同じピンに誤って挿入されていました。
誰かが分解して組み上げた時に間違えたようです。
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チューナ基板にある [CN3] へのケーブルを正しく挿入したら直りました。
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[RF SELECTOR] [FM IF BAND] ボタンのどちらかを押すと両方の機能が同時に変化することがある
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原因は [フロントパネル基板]〜[チューナ基板] を接続する [CN10] コネクタへのケーブル差し込み不良です。
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チューナ基板にある [CN10] へのケーブルを正しく挿入したら直りました。
誰かが分解して組み上げた時に接触不良にしたようです。
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FM の感度が大きく低下している
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FM フロントエンドを仮調整して感度が大幅に上がり放送を受信できるようになりました。
本調整は [再調整] 項で実施します。
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ディスプレイ内が少し汚れて曇っている ・・・ など
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[C243] 交換でフロントパネルを分解する必要があったので、ついでにパネル内を清掃して綺麗になりました。
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同時に、ケーブル表面がネチャネチャしていたのを無水アルコールで拭き取りました。
ネチャネチャはビニール被覆の加水分解でしょう。
再調整
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電源電圧チェッック (VP)
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以下のように良好でした。
VP |
標準値 |
実測値 |
判定 |
備考 |
電源基板 CN1-1pin |
-15V |
-13.5V |
〇 |
OP amp. |
電源基板 CN1-3pin |
+5.6V |
+5.57V |
〇 |
コントローラ |
電源基板 CN1-4pin |
+28V |
+28.3V |
〇 |
VT 電源 |
電源基板 CN1-6pin |
+15V |
+14.2V |
〇 |
チューナ、OP amp. |
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調整
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KT-1010F (1号機)
に記載の手順で調整しました。
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フロントエンドの調整で感度が大きく向上しました。
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ステレオセパレーションが大きく向上し、音質も向上しました。
項目 |
IF BAND |
L |
R |
単位 |
ステレオセパレーション (1kHz) |
WIDE |
68 |
67 |
dB |
NARROW |
38 |
35 |
dB |
パイロット信号キャリアリーク |
WIDE |
-74 |
-71 |
dB |
オーディオ出力レベル偏差 (mono) |
0 |
+0.09 |
dB |
REC CAL |
375.0 |
Hz |
-7.0 |
-7.0 |
dB |
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高調波歪率 (1kHz) は以下のように良好な数値が出ました。
高調波歪率 |
MONO |
STEREO |
WIDE |
0.017% |
0.025% |
NARROW |
0.025% |
0.092% |
使ってみました
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デザイン
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高級感を感じるデザインではなく、むしろ通信機に近いデザインです。
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[KT-1010] [KT-1010U] の後継機で寸法は全く同じです。
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薄型デザインですが、チューナに必要な機能はフル装備です。
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電波が強力な FM 放送を高音質で聴くには [IF BAND : WIDE] [QUIETING CONTROL : NORMAL] に設定します。
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プリセットメモリのバックアップは 2200uF の電解コンデンサなので、電源コードを抜いた状態では1週間程度と思います。
電源コードのプラグを差し込んだ状態では、([POWER] スイッチが OFF でも) 常にこの電解コンデンサに給電されているので、プリセットメモリが消えることはありません。
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感度と音質
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高級チューナにも匹敵する高性能で、FM 放送を高音質に聴きたい期待に応えてくれます。
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感度はかなり高く申し分ありません。
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素性が良いので、
流石に良い音
です。
ハッキリ・クッキリの明瞭度の高い音です。