DIATONE DA-F15 がやってきました!
2020年5月25日、福島県いわき市の O さんより、修理依頼の
DIATONE DA-F15
の故障品が届きました。
バリコン式 FM 専用チューナですが、クリスタルロック方式です。
超魅力的な
Quartz PLL Synthesizer FM Stereo Tuner
です。
修理依頼
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2020年3月20日、福島県いわき市の O さんより、修理の問合せがありました
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30年以上も前に譲り受けた DA-F15 です。
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2019年12月ごろから R-ch に「ボツ、ボツ」と雑音が入り、L-ch しか音が出ない状況がしばしば発生しておりました。
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2020年3月になると、突然両 ch ともフェードアウトするように音が出なくなりました。
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電源の [OFF]→[ON] で一旦は受信できますが、しばらくするとフェードアウトで途絶えたままになってしまいます。
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その時は [STREO] ランプ消灯、レベル表示は4個点灯していました。
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音もさることながら長年の愛着もありますので、何とかよみがえらせていただけないでしょうか?
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通常は修理を受けないのですが、好きなクリスタルロック方式の DA-F15 ということで、特別に引き受けました
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ただし、3〜4月は仕事が忙しいので、5月になってから DA-F15 を送ってもらうことにしました。
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2020年5月25日、修理依頼品の DA-F15 が到着!
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修理・再調整を行い、2020年6月11日に返送しました。
状況チェック
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到着してすぐに状態をチェックしました
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全体的に汚れ・錆が多いです。
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同調ノブがグラグラしています。
原因は回転軸への止めネジの緩みです。
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ダイヤル照明ランプの3個中の2個切れています。
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+0.2MHz の周波数ズレがあります。
(80.0MHz の放送がダイヤル 80.2MHz で受信)
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上記のズレはありますが、ちゃんと受信でき、ステレオにもなって正常そうです。
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内部の状態
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内部には綿埃が積もっており、また、金属カバーには錆があります。
以下の写真は綿埃を除去した後です。
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各写真をクリックすると拡大写真が表示できます。
特に左の写真の拡大は金属カバーを外して表示します。
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目視では電子部品には劣化はみられませんでした。
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連続動作させてみて確認
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電源 ON して2時間後に
「R-ch にボツ、ボツと雑音が入り、L-ch しか音出ない」
現象が再現しました。
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ダイヤル照明ランプの最後の1個も切れて、3個全部切れている状態になりました。
修理
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ダイヤル照明ランプ交換
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下の左の写真に見える遮光版を外すと、本来はガラス管ヒューズ形状の細長いフィラメントランプがあります。
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これを下の右の写真のように LED ランプと交換しました。
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右の写真は LED ランプです。
複合 LED ランプで白色です。
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同調ノブがグラグラしている
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同調ノブを回転軸に止める六角ネジを再締め付けして直りました。
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「R-ch にボツ、ボツと雑音が入り、L-ch しか音出ない」などの現象
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DA-F15S
ではオーディオアンプのトランジスタが故障していましたが、本機では問題ありませんでした。
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結局、経年変化による同調ズレが原因でした。
これは再調整で直りました。
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ダイヤル表示での周波数ズレも再調整で直りました。
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右の写真の袋に入った部品が故障していたものです
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ガラス管ヒューズ形状の細長いフィラメントランプが3本です。
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黒っぽいのはフェライトコアの残骸です。
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FM フロントエンドの [L1] [L3] [L4] コイルに入っていたフェライトコアです。
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ボビンとコアの間が固くなっていたため、調整中に割れたのです。
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[L1] [L3] [L4] コイルを [一旦取り外し]→[割れたコアを除去]→[ボビンを清掃]→[代替コアと交換]→[再取り付け]→[再調整] で直りました。
再調整
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調整手順
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電圧チェック結果
ポイント |
標準値 |
実測値 |
備考 |
JP211 |
+18V |
+19.2V |
オーディオアンプ、ミューティングリレー |
25 |
+13V |
+13.5V |
チューナ基板、クリスタルロック基板、Sメータ基板 |
24 |
+5V |
+5.43V |
クリスタルロック基板、Sメータ基板 |
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再調整結果
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再調整により、以下のように、完全に新品時の性能に回復しました。
項目 |
IF BAND |
L |
R |
単位 |
ステレオセパレーション (1kHz) |
wide |
48 |
49 |
dB |
ステレオセパレーション (1kHz) |
narrow |
43 |
46 |
dB |
パイロット信号キャリアリーク |
wide |
-69 |
-67 |
dB |
オーディオ出力レベル偏差 (MONO) |
wide |
0 |
+0.8 |
dB |
AIR CHECK テスト音 |
wide |
398 -6.4 |
398 -6.4 |
Hz dB |
使ってみました
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全体として
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写真のようにパネルやハンドルに錆が出ていますが、これはどうしようもないです。
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ダイヤルスケールへの照明を白色 LED にしたので、右のように白っぽく光ります。
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同調ノブ操作はスムーズでバックラッシュなどは感じません。
適度な回転重みもあります。
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指針がどの位置にあっても 100kHz の整数倍に同調しています。
実は、緑の同調ランプ (lock TUNING) が点灯していなくても、周波数は100kHz 単位にピッタリ合っています。
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高精度バリコンを使っているので、ダイヤルスケールと指針がピッタリ合います。
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受信性能および評価
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5連バリコン搭載の高性能フロントエンドで、妨害電波排除能力は十分です。
受信性能が優れた高性能機です。
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レシオ検波/クォードラチュア検波を切り換えられるチューナは希少価値があります。
1粒で2度オイシイ!
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wide 時のレシオ検波の音は非常に良いです。
narrow 時のクォードラチュア検波の音はソフトです。
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キチンと設計された非常に良いチューナです。
100kHz ごとに確実に同調できることに感激します。
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性能・音質ともに優れたチューナ
・・・ これからも使われ続けることを祈ります。